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Re: 神的少女は殺戮がお好き【あらすじ更新】 ( No.175 )
日時: 2012/01/28 10:02
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

第三部 完結編

プロローグ もう一度

 私は再びこの世に生を受けられる。
 もう一度、魂の器を持つことが出来る。
 五感を持ち、何かを感じることが出来るようになる。
 あの夜の前の自分を取り戻すことが出来る。
 また、朱里と笑える日がやってくる。
 そう思う度、胸の奥で何かがざわめく。
 胸が締め付けられる。
 痛い。
 耳の奥で何かが渦巻く。
 煩い。
 不安で前が見えない。
 怖い。
 このまま月日が過ぎないならいいのに。
 このまま三人でいられたらいいのに。
 私は、あそこからいなくなってしまう。
 また離れなければいけない。
 そんなの嫌だ。
 嫌。
 耐えられない。
 私は拒んだ。
 魂の器を持つことを。
 もう悲しい思いをさせられない。
 もう朱里の悲しむ姿なんて見られない。
 だから拒んだ。
 でも——。
 もし朱里を助けられるなら、私はもう一度世界に存在しようと思った。
 それがとてつもなく短い時間だとしても。
 それがとてつもなく危険なことだとしても。
 私は、最後のチャンスに全てをかける。
 最後の、生きるチャンスに——。


 ——そして、私は身体というものを持った。
 一時的な身体。
 存在した時の容姿。
 何もかもが初めてのような気がした。
 女神は私に言った。
 「もう一度生きなさい。あなたの親友を助けてあげなさい」
 私は駆け出す。
 胸を締め付けるものがなくなった。
 もう痛くない。
 耳の奥に渦巻く何かを追いだした。
 煩い、煩い、何かを。
 ふわり、と身体が軽くなる。
 もう不安なんて無い。
 私は生きる。
 朱里のために。
 私は生きる。
 この世に生まれた責任を果たすために。

プロローグ 結