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Re: 神的少女は殺戮がお好き【あらすじ更新】 ( No.176 )
日時: 2012/02/05 19:34
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

第一章 再会

 雪の中。重苦しい音がぎゅう、ぎゅうと響く。
 もう歩けない。足がかじかんでる。冷たい。寒い。
 黒髪のストレートロングをカーキ色のコートに打ちつけながら、少女は一歩一歩を踏み出していた。時々グラッっと身体が揺らめき、ロングヘアが宙を舞う。その度に雪の中に倒れる。制服らしきグリーンチェックのスカートに、黒のオーバーニーソックスだけなので、足が寒い。それが頭の先まで伝わってくるようだった。茶色いローファーは雪にうずもれ、ときどき脱げてしまう。冬の昼間の平日で、明るく寒い町には少女は目立つ。学生が学校をさぼっているようなものだ。少女はため息をついた。知っているつもりでいた町が、まるで別物のように分からなくなった。
(記憶喪失? それともただ知らないだけ? それさえも分からない。私を生き返らせてくれた——女神は、記憶喪失になるなんて言ってなかったし……。知らない場所に迷い込んだだけかしら。このままじゃ、補導されちゃう)
 そんなことを考えながら、ただふらふらと少女は歩いていた。
 大通りに出る。今の時間は分からないので、これが通勤途中の車なのかそれともなんでもない車なのか、分からなかった。ずっと遠くに、交番が見える。
(あ、ここはあの通り——?)
 少女には思い当たる節があったようで、交番の方へ向かっていった。さっきの考えはどこに行ったのだろう。でも、そっちの方向に目的の場所があるならしょうがない。少女は持ち手が灰色で胴体が黒のスクールバックを道路側に持ち替えた。出来るだけ道路側に寄り、コートでグリーンのプリーツスカートを隠す。グリーンのプリーツスカートを見たら、きっと桐ヶ谷中学の生徒だと思われてしまうだろう。考えは忘れてなかったらしい。そして早足で交番の前を去る——はずだった。交番の前には、紺の制服を着た警察官がいたのだ。少女はそれを見た瞬間、雪の中に棒立ちになった。