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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神的少女は殺戮がお好き【優美の記憶が……】 ( No.182 )
- 日時: 2012/03/18 17:14
- 名前: 奈美 ◆oQwO6pOV0U (ID: 4pBYKdI8)
「記憶が戻らなかったら?」
私は樹奈先輩を見据えた。
「生活にそれほど支障はでないだろうけど、何らかの支障が出ると思う。神的少女としての自覚がなければ、神的少女として与えられた事をこなせない」
「私は神的少女。存在抹消能力。……死神少女?」
朱里が駆け寄ってくる。あれ、死神少女なんて、どこで聞いたかしら。何か思いだしたのかも。
「死神少女を思いだしたのね! 他は? 他に何か思いだすこと、ない?」
「うーん」
窓から差し込むオレンジ色の光が、私たちを明るく照らす。白い壁に反射して、部屋は思ったよりも明るい。ふと外を見ると、雲が揺らめいて流れていく。白いようで、灰色のような雲だった。雲は自在に形を変えた。
嗚呼、このまま記憶が戻らなければいいのに——。記憶が戻れば、別れは一層早く訪れるだろうから。私はもう二度と別れを経験したくなんかなくて、でも、別れることは私たちには必要。ずっと一緒にいたら、朱里も、きっと私も進めない。成長するということは、そういうものなのよ。
「ないわ。やっぱり、まだ——」
目の前に、透明な欠片が舞う。それは大きいもの、小さいものと様々で、形は尖っていびつだった。騒々しい音と共にやってきた欠片は掛け布団の上に落ちて行き、同時に私と同じくらいの少女が一人、また一人とやってきた。
「樹っ奈ぁー!」
「千秋っ!! 流星も!?」
似たような雰囲気の二人は、ベッド横に着地した。ただあとに来た少女の方は、倒れながらの着地となった。
「せっ、先輩っ! 窓がっ!」
「あ、ごめん。ちゃんと直すから……」
と、何やら呟いて、ガラスの欠片が元通り窓枠にはまった。私たちと同じように、神的な力を持つ存在なのかしら。記憶をなくした今となっては、全てが初体験だ。
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