ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神的少女は殺戮がお好き ( No.25 )
- 日時: 2011/09/11 10:57
- 名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: b1kDOJaF)
第五章 神的少女は見られている
いつも通りの朝———
優美は、いつも通りの通学路を歩いていた。桜はもう散り、踏まれて破れ、黒ずんだ花弁が残るだけだった。
「ねえ、ちょっといい?」
「煩い」
反射的に言ってしまった言葉なのだが、普通の人だったら、大変なことになった。優美は声のした方を見ると、何だというような顔をした。そう、目の前に立ちはだかっているのは、新川園香だったのである。でも、今の優美には、何の怖いこともない。
「ああなんだ、新川さんだったの。で、何。」
「よかったねぇ、煩いって言ったのがいまで。あたし見たんだよね。」
「何を?」
「あんたが人を殺しているところよ。誰にも見られてないと思った?」
「ううん、思わなかった。それで?」
園香は「コイツバカだな」と思った。殺人を犯して、見られていないと思っていなかった。普通なら、そこら辺には気をつけるだろうから。当の本人は、平気な顔をして、見下すような顔をしている。そこが許せなかった。
「ッ……ばらされたくないなら、一万円。くれる?」
「脅し? それなら私には効かないよ。」
「それじゃあばらしちゃうけど?」
「いいよ。だって、私は誰を殺傷したの? いつ、どこで? みんな信じてくれないわよ。」
「あんたなんか、私の手にかかれば風の前の塵に同じよ!」
そう吐き捨て、その場を去った園香は、歯ぎしりをしていた。あの態度は何? もし逆らったらどうなるか分かってるの? このとき、全てにおいて、優美の下に付くことが許せなくなった。自分も、自分の手下たちも。突風が起こった。園香のセミロングの黒髪は逆立ち、いつもより大きく見えた。
- Re: 神的少女は殺戮がお好き ( No.26 )
- 日時: 2011/09/12 17:40
- 名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: b1kDOJaF)
「ねえ知ってた、あんたの親友が人殺しだったこと。」
いつもは絡まない、クラスメートの園香が来た。顔を上げると、そばかすの顔が、目の前にあった。
「ひゃっ、あっ、えっと……優美のこと?」
「そう、優美だよ。見ちゃったんだよねぇ、殺してるとこ。」
「あ——そうなんだ。あ、あのさ、田中奏って知ってる?」
「はぁ? 知らないね。親友が人殺しなのに、よくそんな顔でいられるよねぇ」
やっぱり消えたんだ———奏は。優美に殺されて、それで、消えて———。朱里の頭の中は、優美が奏を突き落とす瞬間で埋め尽くされた。何度も何度も再生されるその場面は、徐々に、鮮明になって行った。園香の皮肉たっぷりの言葉を、朱里は聞いていなかった。それどころか、こんなことを考えていたのだ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
みんなが朱里の方を向く。朱里は頭を抱えて、泣き叫んでいる。そこに、一人の少女が来た。いまの朱里のような子を放っておけない、心優しい子だ。