ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

【プロローグ】 ( No.2 )
日時: 2011/09/03 10:57
名前: 捧げられた犠牲 ◆9Tjx2ZIeM2 (ID: W0yRghQJ)


「わしがいた世界が滅ぶまでの話を聞かせてやろう。さあ、そこにお座り」
老人は言って、向かい側に置かれた椅子を指差した。
「長い話だ、楽にして聞きなさい。終焉の物語を」
老人の顔に悲しそうな色が浮かぶ。
それは古傷を眺めるような顔だった。
少女は首を傾げる。
なぜだろう、なぜ老人は終焉を語るのだろう。なぜ、なぜ……。
老人は少女を見、言葉を紡ぐ。
「なぜ、わしが終焉を語るのかと思っておるのであろう?ならば教えよう。その理由を」
少女は眼を見開いた。
老人は笑みを浮かべる。
「それは罪滅ぼしじゃよ。チカラがあるのに世界を救えなかったからのぅ」
そして彼は眼を瞑り、語りだす。
「そう、あれは30年前のことじゃった。長らく平和が続いた世界は脆く、久しくして起きた戦で崩壊を始めた。わしは軍専属の魔術師だった。魔術を使ったら崩壊のスピードが上がるとわかっていながら魔術を使ったんじゃ。それから3日で世界は崩壊した。勿論、全員が逃げられるわけも無く……」
少女は顔を引きつらせた。
「そ、そんな……」
しかし老人は頷く。
「事実じゃ。わしはこうして生きている。多くの犠牲の上で生きているのじゃ」