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Re: 終焉の物語【1章:コトノハジマリ】 ( No.6 )
日時: 2011/09/04 11:40
名前: 捧げられた犠牲 ◆9Tjx2ZIeM2 (ID: W0yRghQJ)

男はただ、空を眺めていた。
「こんなことになるなんて……。俺がこんなことをしたと知ったら詩文様は怒るだろうな」
いや、違う。彼はある者を想い、泣いていた。
彼の頬を涙が伝う。
「俺は詩文様に酷いことを言ったのに、なんで俺なんかを助けたんだよ。なんで、なんで俺を選んだんだよ!」
彼は叫んだ。空を切り裂くように何回も何回も、涙を流しながら。
すると、彼の肩に手を置くものがいた。
「なあ、蓮。そんなに引きずるもんじゃねぇ。詩文様はもう戻らねぇんだ。だから前を見ろ、道を切り開け!」
そう言う男もつらそうで、その顔がくもっている。
泣いていた男——北原・蓮は顔を上げた。
「お前がそんな顔してたら俺がつらいじゃねぇか!早く切り替えろよ!」
先程蓮の名を呼んだ男——伊藤・悠樹は叩きつけるように言う。
悠樹の眼にも涙が浮かんでいるように見えるのは気のせいではないだろう。
「そうか、御免。悠樹も詩文様のこと大切にしてたもんな」
蓮は言って、眼を伏せた。