ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 13 ( No.13 )
- 日時: 2011/09/24 21:18
- 名前: すずか (ID: lYj7ms9H)
「シンさんは本当に凄いと思うよ。流石国王直属軍隊長だね」
「だろ?」
「何でイル君が得意げなのさ?」
「俺が世界で一番尊敬している方だからな」
憧れのシンが褒められ、イルは鼻高々である。
ふと気になって、イルはサカエについて尋ねてみた。
「ウィル、今はお前とショータがここを切り盛りしてるけど、その前はサカエさんがここを切り盛りしてたのか? サカエさんが仕事してるところ、見たことないんだが」
「いや、それまではここに住んでなかった。旅人的な感じだったのかなー、今思えば。色んな国を転々としてた」
「へえ」
生まれも育ちもエレム国のイルとしては、そのような生活は全く想像できなかった。他国に行ったことも、小隊長として公務で行った経験を除くと皆無である。
「お前、ここに来て何年だったっけ」
「もうすぐ5年かな」
「拾われたのは?」
「5,6歳だったと思うよ。懐かしいね」
ウィルが少し目を細める。その向かいで、イルは不審に思った点があった。
サカエとは何度か会っているが、彼は闘いも魔法もからっきしだと本人から聞いた。そんな人物が、まだ年端もいかない子どもを2人連れて何故無事でいれたのだろうか。
「なあ、ウィル」
「あ、ちょっと待って」
疑問を投げかけようとすると、ピクリと肩を震わせたウィルが片手でイルの言葉を遮り、窓の方を向く。イルも釣られて視線を動かすと、コツコツと窓を叩く緑色の小さな狐がいた。ウィルが使役する風の使い魔である。ウィルは、ウィンと名付けていた。
「ごめんイル、窓開けてやってくれない?」
イルが窓を開けるとウィンは中に飛び込み、ちょこんとウィルの前に鎮座した。
「どこに行かせてたんだ?」
「ショータの付添い。いつも誰かが遠出する時は連れて行かせてる」
『イルもいたのか』
ショータの声が、ウィンから発された。ウィンの特殊能力の1つに、声の振動を風に乗せて遠距離でも会話をさせるというものがある。ただし、どちらの居場所もウィンが把握していないと会話ができない。
「ショータ、どうしたの?何があった?」
『かなり酷い情報が入った。丁度良い、イル、エレム国軍代表として今から言う情報を買え』
ショータが買え、と推すものは全て半端ではない情報であることをイルは知っているので、二つ返事で了承する。
「分かった、買おう。後で請求しろ」
『話が早くて助かる。イル、聞いたら直ぐに報告しに戻れ』
そう喚起し、ショータは信じられない情報をイルに与えた。
『ジャンド国が滅亡した。龍人が原因だ』