ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

14 ( No.14 )
日時: 2011/10/12 04:04
名前: すずか (ID: gKVa1CPc)

 詳しい情報は城に戻ってから伝える、とショータが言うのでイルはウィンを連れ、全速力でシンとベルの居る直属軍指揮室へと急いだ。

「ジャンド国が?」
『ええ、俺の目の前で潰れたので確かです』

 ショータの報告を受け、シンは顔を険しくした。ベルは真剣な表情で、羊皮紙に何やら書き殴っている。
 ジャンド国は、近場ということもありエレム国とは親交が深い。そこが滅亡したとなれば、エレム国が無関係でいられるわけがない。

「目の前、というのはどういうことだ、ショータ」
『商人の護衛の依頼でジャンド国に来ていたのですが、取引が終わりさあ帰ろうとした瞬間、目の前の通りを龍の姿をした炎が通り抜けていきました。勿論通りにいた人は全員、焼け焦げて酷い有様です』

 その光景を想像した瞬間、イルは吐き気がした。きっと、現実世界とは思えないようなものだったのだろう。

『そのままその炎は城を包み込んで、そこからは炎による殺戮でした。意思があるかのように国中を動き回って、燃えていない建物は一軒もないような状態です。国民も、おそらく8割以上は既に命はないかと』
「それが龍人の仕業だと、何故分かったんだ?」
 
 イルの疑問には、シンが答えた。

「魔術と龍は属性的に非常に相性が悪く、龍が関連するような魔法は、魔術師には使えない。だから、その魔法が使えるのは、どちらの属性も素質として生まれた時から兼ね備えている龍人だけだ」
『流石に知識が豊富ですね』
「ショータ、龍人の姿は見たか?」
『炎を操る少女がいました。おそらく彼女が龍人かと』
「少女!?」

 思わず、イルは素っ頓狂な声を出してしまった。

「外見の詳細は?」
『後ろからしか見ていないので目鼻立ちは分かりません。長い青髪、白めの肌、くすんだこげ茶の羽織りもの、同じ色の丈の短いローブ、そして黒いブーツ。俺が確認できたのはこれだけです」』
「青髪ですか。この辺りには青髪の民族はいないので適合は容易ですね」

 ベルが自分に向けて確認をするように言葉を発する。その間も、羊皮紙にペンを走らせる手は止めない。

「ショータ、依頼主達はどうなった?」
『とっくに火の餌食です。すみません、火が回ってきたのでそろそろ切ります』
「分かった、気をつけて戻って来い」

 ウィンが窓が飛び出して行った後、シンは椅子に座りこみ、消沈したように目を伏せた。

「挑発行動か」
「そうとしか思えませんね。他にメリットがないです」

 トントンと書き殴りの羊皮紙をまとめながら、ベルが同意した。