ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 2 ( No.2 )
- 日時: 2011/09/07 22:38
- 名前: すずか (ID: kb3EhHq0)
拗ねてドスンと芝生に腰を下ろし、手に持ったクリスタルをパキンという小気味いい音を立てて、割る。目の前に見えるトカゲ男の惨状は掻き消えた。
「まあ、以前よりは強くなったんじゃないか。未熟なのは変わらないが」
「うるせえ」
全くからかっているつもりはないのだろうが、若干無神経なショータの言葉に思わず子供じみた暴言を投げつけてしまう。しかし、それぐらいでショータの仏頂面は変化することもない。さっさと立ち上がり、帰り支度を整え始める。ムッとしながらも、従わないわけにはいかずイルもそれにならった。
イルの威厳を守るために補足するとすれば、一般人と相対的に比較すると、イルの実力は国民全員の中でも上位1割には手堅く食い込むクラスである。それは、エレム国軍の中でもエリートである国王直属軍の中で、小隊長の称号を齢18にして手に入れていることを見れば明白である。
それでも、目の前で黙々と歩き続けるショータには全く手も足も出ないのだ。イルとしては、軍人が一般人に負けている事が非常に気に食わない。そして、その一般人が幾度となく来る軍への勧誘をにべもなく断り続けていることも気に食わない。そんな思考をしている内にまた腹が立ち、イルはショータの背中を睨みつける。
身長も年齢も体格もほとんどイルと変わらない。一体何が違うのだろうか。
「ショータ」
「何だ」
「何故、お前は強い?」
ショータの実力を知ってから、何度も問いかけている質問。それに帰ってくる答えも、ずっと変わらない。
「歪だからな」
いびつ、と声に出してみる。ショータは歪んでいるのだろうか。イルの見ている限り、性格はあくまで変わり者の範疇で、無愛想だが、決して悪人ではないという決断を下している。歪んでいる場所は、一体どこなのだろう。
いつもはそこで終わる会話だったが、ふと思い立ち、1つ質問を増やしてみた。
「俺も歪になったら、お前のように、ウィルのように、シン隊長のように、強くなれるのか?」
ショータが立ち止まり振り向いた。少なからず反応があったことにイルは緊張し、答えを待つ。
ショータの答えは、至極まともなものだった。
「何故真っ直ぐなお前が、わざわざ歪になる必要がある?」