ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

4 ( No.4 )
日時: 2011/09/10 23:22
名前: すずか (ID: sjTpucjC)

 ショータはシンに軽く挨拶を済ませると、さっさと帰路に着いてしまった。城門に残されたのはシン、イル、そしてシンに群がる子供たち。

「たいちょーさまー」
「ん?」

 膝に乗っかっている子どもが、シンを見上げる。シンは顎を引いて子どもと視線を合わせる。

「いまの人はだれですかー」
「ショータか?俺の友人の弟だ」
「あの人、こわい」

 イルは軽く目を見開いた。無愛想度合いではショータもシンも大して変わらない。それでも子どもたちはシンに懐き、ショータを怖がる。これが、ショータが言っていた歪な者と真っ直ぐな者の違いなのだろうか。
 シンが数秒、無言でその子どもを見つめる。それから、子どもの腹に両手を回して抱え込み、子どももろともパタンと後ろに倒れ込んだ。

「……怖いかもしれないな。でも、お前を襲ったりしないから大丈夫だ」
「ほんとーですか?」
「本当だ。もし襲ってきても俺が守ってやる」
「たいちょーさまが!」

 子どもはキャッキャと喜びの声をあげた。イルはその和やかな光景に目を細めた。きっと、シンがいる限りこの子どもたちは安全だ。

 結局、日が傾き始めるまでシンとイルは城門にいた。2人とも幾つか仕事があったが、気付いていない振りをしていた。恐らく帰ったら参謀長官に怒られるだろうが、たまにはこんな日があってもいいのだろう。
 そろそろ子どもたちを城門内に入れなければならないのではないか、とイルが思い始めた時、城門をくぐる中年の女性達を見た。きっとこの子どもたちの母だろう。キョロキョロと辺りを見回し、シンの傍に集まる自分の子どもたちを発見して一同ギョッとする。慌ててこちらに駆けてきた。

「た、隊長様!申し訳ございません、うちの子どもが……」

 シンはあの後、子どもたちに良いように遊ばれていた。そして今現在、仰向けで大の字に寝転がるシンの腹の上に1人、右手左手を枕に1人ずつ、足の間に1人と合計4人の子どもがシンに密着して寝息をたてていた。
 起き上るに起き上れないシンは、そのまま母へと言葉を返す。

「いや、気にするな。これはこれで楽しかった。起こさないように連れて帰ってやってくれないか」

 やたら恐縮しつつ、母親たちは子どもたちをおぶって城下町へと戻っていった。むくりとシンが上半身を起こす。

「やっと体が自由になった」
「はは」

 いつもと変わらない表情で冗談を言うシンが何だかおかしく、イルは笑いを漏らした。