ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 黒い蝶は闇に消える ( No.30 )
日時: 2012/01/14 09:15
名前: 璃亜 (ID: O72/xQMk)

No.12 「必要の無い蝶々」


がつがつがつ・・・
そんな音が、蝶の部屋に響いていた。
その音の主は

豹「やっぱ美味———!!」
リィ「ごめんなさい蝶さん。。。」
蝶「いいえ、お構いなく。豹牙、もう少し上品に食べて頂戴」
レ「美味い・・・」

豹牙だった。
蝶の作った飯を、かきこむ勢いで食っていた。
レオンは初めて蝶の飯を食ったようだった。
蝶が豹牙を呆れ半分で見ていた時、豹の形をしたものが蝶の部屋を駆け巡った。
透通った、鴇色の豹だった。

蝶「何かしら、これ」
豹「それ、俺の豹。配達豹なんだ」
蝶「あぁ・・・。依頼蝶みたいなものね」

蝶は納得した。
鴇色の豹は豹牙の目の前に来て、犬のお座りをする。
そして一枚の手紙と化した。
その手紙には、手紙主の幸福を願う事が書いてあった。

蝶「貴方の仕事は・・・幸せを欲する者の欲望を奪い取る事だったわね」
豹「ああ。愉快でたまんねぇぜ」
蝶「そういえば、斗無さんは大丈夫かしら」

蝶は窓の外を見た。

豹「トム?誰だソレ?」
蝶「それは・・・」
レ「今のコイツの依頼主だよ」
蝶「とてもとても凄い恨みを持った方よ。面白いわ」
豹「・・・・・・・へぇ」

豹牙はむっとした顔。
蝶は気にせず窓の外をみてふっと笑った。

—————

斗「つまんねぇ・・・」

斗無は、もうほとんどの恨む者を殺してしまった。
そしてもっと恨む者はいないかととても考えていた。
そんな斗無の感情を察知したのか、蝶々が斗無の周りをぱたぱたと飛ぶ。
斗無に「落ち着け」と言っているようだった。

斗「ったく・・・コレじゃァこの蝶も意味ねぇじゃん」

そう言って、蝶々を手に乗せると、ぐしゃっと握りつぶしてしまった。
斗無の眼には憎しみもあるが、それ以上に怒りの色が絶えなかった。

—————

蝶「っ・・・」
レ「どうした?蝶」

その時、蝶は小さな声を出した。
左腕の一部を少し痛がっている。
蝶はその事態が何を表しているか悟ると、静かに言う。

蝶「どうやら斗無さんは、憎める人を全て殺したようね。必要ないから、と渡した蝶々を握り潰したようだわ」
豹「とことん勝手な奴じゃんか」
蝶「良いのよ。斗無さんが満足しているならば。蝶々は替えがきくし・・・」

蝶はくすりと笑う。
そして何かを探るように、窓の外を見つめた・・・。