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黒い蝶は闇に消える ( No.8 )
日時: 2011/09/16 17:07
名前: 璃亜 (ID: O72/xQMk)

No.4 「紋章と契約」


数年前のことだった。
蝶は幼き頃から両親に捨てられ、いつも一人だった。
食料もほとんど無く、更に持病を持ち、一日暮らすのでも大変だった。
あの日も、行くあてもなく道を歩いていた。

?「お前、随分哀れな格好をしているな・・・」

突然声が聞こえ、蝶は立ち止まった。

蝶「誰・・・。何所に居るの・・・?」
?「お前の真後ろに居るだろう」

蝶は振り向いた。
そこには、深緑色の髪をした男が立っていた。
面白そうに蝶を見、薄笑いしながら。

蝶「・・・何方ですか?私に何か用でも?」
?「俺は【レオン】・・・。お前、誰かに恨みでもあるのか?」
蝶「私が憎いと思っているのは、この世に生きている者全部よ」
レ「ほう、面白い・・・」

レオンと名乗った男は、蝶をまじまじと見た。
そして口の端で笑うと言った。

レ「お前、俺と契約してみないか?」
蝶「・・・?」

蝶は不思議そうな顔をした。
状況が飲み込めていない故、知らぬ男から契約などという言葉が出たからだ。
蝶は改めてレオンに向き直り、問うた。

蝶「どういう意味かしら」
レ「俺と契約すれば、お前の憎い奴は幾らでも殺せる。そして、お前と同類の奴等の手助けが出来る」
蝶「なるほどね・・・」

蝶は考えた後、口に微笑を浮かべた。

蝶「いいわ。」

ふたつ返事だった。
レオンは微笑を浮かべて言った。

レ「では、お前の恨みは聞き届けた。契約を成立させる」
蝶「悪魔との契約は・・・右瞳を犠牲とする・・・でしょう?」
レ「ほう、よく知っているな」
蝶「右瞳に紋章を残せば、それが悪魔との絆になるらしいわね」
レ「そうだ」
蝶「既に私の瞳は使い物になってないわ。やるならやってちょうだい!」

幼かった蝶だが、レオンの方を見ていた瞳は力強いものだった。
レオンは薄笑いした。
レオンは蝶の前まで歩いて行くと、蝶の右瞳に触っり、爪をつきたてた。
途端に蝶は痛そうに顔を引きつらせた。

レ「これで契約は完了だ・・・。お前には同じく恨みを持つ奴の手助けが出来、その手助けとなる蝶を操れる力をやろう」
蝶「・・・」

蝶は何時の間にか死装束の格好になっていた。
これが、新しい黒泉蝶の物語の始まりだった。