ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 混沌な主人公は今日も不機嫌なようです。 ( No.1 )
- 日時: 2011/09/10 20:25
- 名前: Spade ◆1R8FyXsIeY (ID: OXTNPTt9)
【序章】
その勇者は、他の勇者とは少し違っていた。
その勇者は、他の勇者と比べものにならないくらい強い。
自分の背くらいある大剣を自由自在に操って、敵を圧倒的な力でなぎ倒す。
それでもって、その勇者の使う魔法の威力は凄まじい。
その勇者は、勇者になる前から噂の絶えない男だった。
そしてその彼の話を聞いては、一国の王達は——
『将来有望な勇者になるだろう』
『きっと我が国を、いや…世界を救ってくれる英雄になるに違いない』
『彼なら魔王でさえ、いともたやすく倒してくれることだろう』
そう口々に言っては褒めたたえていた。それくらい強い男。
彼の無敗伝説なんて何度も聞くし、とにかく凄いんだ、って。
けど、何度も言うけど——彼は“他の勇者とは少し違っていた”のだ。
それを知ったのは、私が彼と対面した時。
彼はある国で勇者に採用されたらしく、少し前にその仲間の募集がされたのだ———
私は落選覚悟でそれに応募して、なんとなんと仲間の4人に選ばれたのだった!
そして対面した時というのが、その勇者を送り出す時…旅の儀式の時だった。
この世界では一国で勇者を採用して、旅の儀式を行うのは珍しくない事。
むしろ、勇者を送り出した国こそが、『大国』として世界に認められるような時代なのだ。
そしてもうかれこれ500年前から、勇者を送り出すという習慣が人々の常識となっていた。
そうしてこの国も『大国』として生まれかわるんだ。
私はその式典で、それもあの噂の勇者のパーティに入れるものだから、凄く嬉しかった。
またその国は元々大国程の規模をもった国だったから、式典も今までとは比べ物にならない程大規模なものだった。
けど…そんな式典で、初めて彼にあった時。
私はすごく、すごくこの先どうなっちゃうのか心配になりました。
なぜなら彼は、確かに強かったのですが——————
勇者とは程遠いくらいに、すっごく、すっごーく・・・性格が悪かったんです。