ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 混沌な主人公は今日も不機嫌なようです。 オリキャラ募集 ( No.10 )
- 日時: 2011/09/15 00:38
- 名前: Spade ◆1R8FyXsIeY (ID: OXTNPTt9)
私は名前も知らない彼を治癒系魔法【ヒール】で彼の傷を癒しました。彼の頬に向かって両手をかざして、それから魔力を送り込むという応急手当でしかないですが…これで痛みは和らぐ筈です。
「…はい、終わりました」
「……」
すると、彼は不思議そうに怪我をしていた頬をさわっていました。
痛みが和らいでいないのかと、心配になりました。
しかし彼はパッと表情を明るくしました。
「……ふーん。お前、結構いい腕してんだな。名前でも聞いとこうか」
え?
私は一瞬何を言われたか分らず、あっけにとられてしまいました。
これは…光栄なことなんだろうか。私は何も言えずにただ彼を見ていました。
すると彼は、私の持っていた例の『招待状』に目をやって、サッと私から取り上げてしまいました。
「あっ…!」
「ふーん…“ヴィヴィス・ラ・アクアマリン”か…
…、
…ん?この招待状…?」
「か、返してください!大事なものなんです!」
私は、驚きで見開いていましたが、私は何とかジャンプして取り返しました。
そして大切に、大切に握り締めると、私は彼をキッと睨みました。
すると彼は何故かハハッと笑います。
「…何で笑うんですか」
「いや、その招待状…お前が今回の祭りの主役4人のうちの1人だとは思わなくてな」
彼は—————今回のメンバー、つまりこの式典の主役がなぜこんな所にいるのか疑問に思った、と、素直にそう私に言いました。確かに、今頃他の皆さんは今、式典の会場であるお城にいても仕方ないと思います。けど、私がいるのは城下町…それも国の入り口の門をくぐった場所。
私は素直に、なぜここにいるのか彼に言う事にしました。
「それはその…………私には、自信が無いんです。
私にあの城へ入る権利があるのか…私がこ、今回のパーティメンバーでいいのかって」
そう言うと、彼は『ほう』と言いながら腕組みをしました。
私は急に恥しくなり、いてもたっても居られなくなったので、私は倒れていた二人も治療し始めました。
そして、赤面を見られないように彼に視線を合わさずにいます。
「見ず知らずの方に胸の内を打ち明けるのも失礼だと思うんですけど…。
…、
私…まだ10歳なんです。それでもって田舎育ちで…
体力も無いし、強くも無い。取り柄といえば、本で身に付けた知識と治癒系魔法くらいで…」
「10…?」
すると彼は、意外な所で驚きの声を上げました。
彼はその言葉を聞くと、私を興味深そうに見ました。
「10歳、ねぇ…背は低いと思ってたが、今回のパーティはこんなちっこいのもいるのか…」
「ち、ちっこいは否定しないですけど…、ちっこいの“も”ってどういう意味ですか?」
「あぁ、それね」
ふと彼のいった言葉が気になって、私は彼に尋ね返してみました。
すると彼は————ニイッと口の端を吊り上げて笑いました。
「—————お前さ、今回の例の勇者ってどんな奴だと思う?」
「え…?そ、そんなの…噂通り凄い人だと思いますよ?それは強くて優しくて…」
「ははっ、強いはともかく“優しい”ねぇ…」
すると、私の言葉を聞いた彼は—————嘲笑を浮かべたのです。
「なっ…!!」
「お前…いや、お前に限らず、ここの国の奴等っておめでたい奴等ばっかだよ本当。
——だって、その勇者は今日、儀式には来ないんだからな」
彼は嘲笑いながら、そう私に吐き捨てるように言いました。