ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 混沌な主人公は今日も不機嫌なようです。【参照600突破…?】 ( No.102 )
- 日時: 2011/11/15 18:46
- 名前: Spade ◆1R8FyXsIeY (ID: PMzvo2iV)
———ガシャンッ!
その音を聞いた時、私は再び目を覚ましました。
冷たい石肌の感触。いいえ、冷たいのはそれに限らず空気も酷く肌寒い。
『ここ、は?』
私はゆっくりと置き上がりました。
薄暗い…壁にかかってある松明でかろうじて周りが照らされ…ぼんやりと見えてきます。
石。石石石石石…そう、辺りは石で作られた壁に床です。そして少し目線を上げると——鉄格子。
私はまだハッキリとしない意識の中で、ふとある場所を思い浮かべました。
あぁ、そうかここは…
「…牢の、中…?」
「ご名答。ここは城の地下の牢獄デス♪」
ふと聞こえた声…誰だかすぐに分りました。
私達をここへ連れてきたであろう犯人————すなわち、
「レオ…さん」
そう、“レオ”その人です。私は睨むように声をした方へと目線を向けます。
しかし、そちらを見てみればあら吃驚。
「えっ…!?な、何で貴方まで檻の中にいるんですか!?」
「おやおや、気がつきましたか」
なんとレオさんまでもが私達と同じ牢の中。
すねたように膝を抱えて座っています。
そしてレオさんはやはりすねたように口を尖らせ、牢の外に目線をずらして言いました。
「…フフ、愚問ですネ。
私が貴方達から離れてしまうと、貴方達にかけている魔法が解けてしまうのですよ。
なのでレイモンドにお前もここにいろと残されてしまったのです…」
「レイ…モンド?」
「私の仲間ですヨ。貴方を踏みつけた血も涙も無い極悪非道な男デス」
私は女性と子供に手荒な真似はしない主義なのですヨ、と言って溜息をついてみせます。
私はその言葉に思わず口ごもります。
…真意が見えません。
この人のペースがまったく掴めません…何を、考えてるんでしょうか。それに、聞きたい事は山ほどある。
いえ、その前に、です。
今、確かにこの人———私達に魔法をかけてるって…?
「私達にかけてる魔法、ってなんですか?」
「…質問が多いですネ…まぁいいでしょう。時間もある事ですし、特別にお教えしましょう。
———貴方達には今、呪縛魔法をかけているのですヨ。気付いてませんか?」
「呪縛魔法…!?」
呪縛魔法?そんなはずありません。
今、どこも束縛されてなんて…
「———おそらく、“魔封じ”でしょう。魔法が使えないみたいです…」
と、その時。
背後から、聞きなれた声がしました。
「…メイレンさん!」
「まだ首の後ろが痛みますね…一発で気を失ってしまうとは屈辱です。
しかし、あらかたの状況はお二人の話を聞いて承知しました」
メイレンさんは悔しそうに一瞬眉を潜め、レオさんを一瞥して睨みました。
「———そうですか、そう言うわけだったんですね。私達はようするに“貴方達”に騙されたと。
…一つだけ質問しますが、貴方達は一体何者なんですか?」
「あぁもうッ、貴方達は質問が多いデス」
しかし、メイレンさんに睨まれてもなお、余裕の表情を見せるレオさん。
レオさんはよっこらしょっ、と言いながら立ちあがります。
「うーん…そうですねぇ、まずはヴィスさんの質問から答えてあげましょう」
「あの、ヴィヴィスです…」
「細かい事はいいんですヨ。
…質問に答えると、貴方達には今、呪縛魔法がかかっています。
私は、“範囲魔法”…それも、呪縛魔法系専門の使い手デス」
“範囲魔法”
基本的に魔法というものは主に、直接魔法と範囲魔法に分れています。
もちろん例外もありますが、直接魔法は自分が直接何かに干渉する魔法で、
範囲魔法は効果範囲を自分で指定して発動させる魔法です。
有名な直接魔法は私が扱う「治癒魔法」、また「強化魔法※」。 ※自分を強化する魔法。
攻撃系魔法でいうと、“魔法陣を発動させる魔法”以外のものです。炎を体に纏わせたり、手から雷を出したり…
あと、自らを魔法の一部とする特殊な魔法…主に変身魔法も直接魔法の一種です。
範囲魔法は、先程説明した魔法陣を発動させることで扱える魔法です。
レオさんは、この範囲魔法を使用しているというのです。
「——この魔法は特別なもので、魔法陣の中の魔力を打ち消すという大変珍しい魔法なのですヨ。
しかし習得したばかりなので自分までその対象になってしまいます…私もまだまだですネ」
そんなレオさんは、溜息をつきながら憂いていました。
しかし、それも一瞬の出来事で、今度はコロッと明るい表情をして言います。
「そして次は、貴方の質問にお答えしましょう。
…私達の名前は反王国派軍“ヴァッカニア”。私はその幹部の一人」
そして彼は、肩をすくめて一言付け加えます。
「…ま、盗賊と言った方が貴方達には理解しやすいと思いますが。
今日はこの祝典をめちゃくちゃにしてやろうと思ってわざわざやって来たのですヨ♪」
その瞬間、レオさんは確かに一瞬———歪んだ笑みを浮かべました。
そして彼が笑みを浮かべた瞬間、城内に炸裂音が轟きました。