ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 混沌な主人公は今日も不機嫌なようです。 ( No.3 )
- 日時: 2011/09/11 08:51
- 名前: Spade ◆1R8FyXsIeY (ID: OXTNPTt9)
「————ってぇなテメェ!!謝りもしねぇで…ナメてやがるな?」
「あぁ?何か言えよゴルァッ!」
と、そんな時でした。
前方で二人組の男が、ある男の人に絡んでいたんです。
…絡んでいる人は怖そうな人でした。
絡んでいる人の方は、剣も持ってて、外見が凄く怖かったんですけど…
絡まれている人は、何だかやる気の無さそうな人でした。
絡まれている人は真黒な髪に、真黒な瞳。眼つきは鋭いけど、どこか面倒くさそうな目でした。
肌の色はとっても白くて、首は紅のネックチーフを巻いています。
そしてその人は、武器を持ってませんでした。
どうやら、絡んでいる人たちに絡まれた人がぶつかって来たと言いがかりを付けてるみたいでした。
「別に…知らねぇけど」
「はぁ?テメーがぶつかって来て俺の大事な防具に傷が着いたんだろ!!どうしてくれるんだぇぇ!?」
「そうだよ、金払え、金。だったら痛い目見ないで済むんだぜ?あぁ?」
…この人がぶつかったせいで傷がついた、それは嘘です。
だって、私には分るんです。
あの人の傷は、傷というより燃えた痕。
火系のモンスターのブレスで傷ついたものだろう。
言いがかりにも程がある。
「…」
「チッ、シカトかぁ?痛い目に遭いてぇみたいだな…」
「あぁ、じゃあ散々痛めつけた後に金はもらうとするか」
…最低だなあ、と思いました。
『二人で、しかも言いがかりでそんな…!』
私はそれを声に出しかけて、飲み込みました。
その直後、男は彼を殴りました。
しかし彼はその場から微動だにせず、ゆっくりと視線を彼等に戻しました。
が——彼の目線だけは…たしかに鋭いものに変わっていました。
「テメー…調子乗んなよ!」
それが気に入らなかったのか、ついに一人の人がその人の胸倉を掴みかかりました。
反対の手には、剣。
その剣を上にかざして、その瞬間男は彼に向かって振り下ろし———————
———ゴシャッ!
周りに、鈍い殴る音が響き渡りました。
でも…倒れたのは、胸倉をつかんだ男でした。
『え————』
ふと彼を見た瞬間、彼は鋭い眼つきで倒れた男を見下げていました。最初の眼つきとは大違いでした。
ちょうど男のお腹の所くらいの高さくらいの位置で彼は拳を握っていました。
「っ!この野郎ォ…ナメやがって!」
「黙れ」
しかし彼は一言そう言うと、倒れている男から剣を奪い取り、もう一人の男が剣を振り下ろすより早く剣先を彼の首に突きつけました。
それは、一瞬。
ほんの少しだけ首が剣先に触れ、首の皮膚が少し切れている様で、血が出ていました。
男は小さく悲鳴を上げて腰を抜かしてしまいましたが—————
「寝てろ」
彼はそんな男にも容赦なく頭をゴシャッと蹴り込んで昏倒させてしまいました。
い、いくらなんでもとは思いましたが、私は言葉に出せませんでした。
そして彼は極めつけに男の側でおもむろにしゃがんだと思ったら、おもむろにお金を全部抜きとり始めたんです!(もちろんもう片方の人のも…)
「ちっ、散々態度でかく言っといてこれっぽっちか。ならアイテムアイテムっと・・・」
私は茫然として眺めていましたが、何食わぬ顔で男を追剥ぎし、そしていくつかアイテムをポーチに入れて去ろうとしました。
けど、ふと彼の去り際にある事に気が付きました。
「あ、あのう…」
私は彼にそう声をかけると、彼は「げ」と、バツが悪そうに私を見ました。
「あの…」
「———何だよ」
「あ…あの……け、怪我…」
なので私はもじもじしつつも、彼の口元を指差しました。
すると彼は『あぁ、なんだこっちか』と言いながら頬に手を当てました。
なので私はニコッと笑って彼に言う。
「あの、よければ直しますよ?私、白魔導師なんです…」
彼は意外そうに私を見ました。