ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 混沌な主人公は今日も不機嫌なようです。 ( No.30 )
- 日時: 2011/09/19 12:28
- 名前: Spade ◆1R8FyXsIeY (ID: OXTNPTt9)
「…あの、ありがとうございました。
おかげで助かりました——ライラ・サード・スーオンさん…」
彼が去った後、そこには式典とは思えぬほどの静けさが漂っていました。
辺りではさっきの青年の事を口々に言う声が聞こえ、ある人は警備の人に事情説明をしています。
そんな中、私は———魔王討伐メンバーと名乗ったライラさんに、頭を下げました。
するとライラと名乗った彼女は、脚部分に巻いてあるガンホルダーに銃を収め、私に向き直りました。
そして彼女は私をジッと見て、少し咳払いをしつつ言いました。
「…先程はついつい熱くなってしまいました。まぁ貴方が無事でよかったです」
…ゑ?
私は思わず、間抜けな顔で彼女の顔を見てしまいました。
『———く、口調がさっきと随分違うような…』
私は、彼女が先程の口調を思い返し、今の口調とを頭の中で比べてみましたが…やっぱり、全く違う…!
しかも、さっき彼女を取り巻いていた雄々しい雰囲気とはまるで違う、控え目で上品な雰囲気を彼女は纏っていたのです。
そして、そんな彼女は小さく溜息をつくと、私から背を向けました。
「…もう一人の方と、貴方を探しに来てたんです。
4人揃わないと儀式が始められないのでさっさと来てください」
「あ…!は、はいっ…!すいません!」
私は彼女の言葉でハッとし、慌てて後を追いました。
しかし、心の奥底では、彼の言葉が私の決意を揺るがせていました。
“お前なんかに旅はできない、お前の言う仲間に迷惑かけるだけだ”
* * *
全速力で城下町を駆け抜け城に着くまでの間、私は必死に彼女の後を追いました。
剣士と言うだけあって、身軽でとても素早かったのです。
「…着きましたよ」
ライラさんは城の前に着くと、スタスタと門番に駆け寄り、招待状を見せてさっさと城の中に入って行きました。
私は息を切らしながらも、休む暇など無かったので、門番に招待状を見せました。
すると門番は私の方をチラッと見て、もう一度招待状に目線を戻しました。
…こんな小さい子供がパーティメンバーに選ばれたのが、半信半疑なんだと思います。
私が下に目線を落とすと、ふとライラさんの声が聞こえました。
「その子で間違えありません。門番さん、時間ないので早くしてもらえないでしょうか」
「…さようで御座いますか。申し訳ございませんでした…城内へどうぞ」
すると、門番は道を開けてくれました。私は、ライラさんに連れられ奥に行きます。
———長い長い廊下。
紅いカーペットの上を、ライラさんは堂々と歩いていきます。
そのカーペットの側には、一定の間隔ごとに兵士さんが立っています。
その彼等の前を通り過ぎる度に…目線がずっと背中に刺さるのでした。
そして、その一番奥の部屋。
大きな扉がありました。ここが、「王の間」。この先に、私を選んでくれた王様がいる。
「————…」
ライラさんは門番と会話を交わし、大きな扉の部屋の隣にある個室の方を指さしました。
そして、私の方を向いて…言います。
「…もうすぐ儀式が始まるので、荷物を置いて来てください。
あと、もう一人のパーティメンバーの人もいると思うので呼んできてください」
「あ…わかりました…」
私は言われるがまま、扉の方へ走って行きました。
『…本当にもうすぐ、私は勇者様の仲間になれるんですね…』
私は、歓喜と不安でいっぱいになります。そして、そのメンバーの一人がこの中にいる。
震える肩を抱え込み、一つ深呼吸。
そして私は覚悟を決め、もう一人がいるという扉を、ゆっくりと開けました—————
つづく