ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 混沌な主人公は今日も不機嫌なようです。 ( No.38 )
- 日時: 2011/09/21 23:31
- 名前: Spade ◆1R8FyXsIeY (ID: OXTNPTt9)
「…わぁ……」
私は、その扉を開けて————思わず感嘆の声を漏らしました。
紅い大きなカーペットが敷かれており、奥にある長いテーブルには見た事も無い高級な料理が並んでいました。
しかしほとんどその料理には手は付けられていませんでした。
それに、見上げれば美しいシャンデリア。は、初めて見ました…
———まさに豪華絢爛。
その一言に尽きます…辺り一面、本でしか見た事の無い豪華なものばかりです。
「…どうかしましたか」
すると、扉の前で立ちつくしていた私に、後から入って来たライラさんが声をかけました。「早くしてください」と。
その声で私はハッと我に帰り、すぐさま荷物を置こうと辺りを見渡します。
すると扉の側にいた黒の正装をした執事が、私の側に来ました。
「お荷物はこちらでお預かりします」
「あ、は、はい!ありがとうございますっ」
私は慌てて彼に荷物を預けました。
執事だとか、そういうかしこまった対応にも、私は慣れていませんでした。
————ん?
彼に荷物を預け、私はふと部屋の奥を見ました。
すると、一番奥の窓際。そこで肘をつきながら城下町を見下ろしている人物がいるのに気が付きました。
『あれ?あの人は——…』
私は、ライラさんの方を見ました。
するとライラさんはフッと私の方に視線を落として、言います。
「もう一人のメンバーです。挨拶ついでに儀式が始まってしまうと言ってきてください」
「は、はいっ!分りました」
私はそれを聞くと、もう一度深呼吸しました。
…彼が、もう一人の仲間。
私は小さく「よしっ」と呟いて、彼の方へと向かいます。
彼は、体全体を覆う黒いフード付きのローブを着ていました。
そのフードは今は降ろされており、長い紺色の髪をさらけ出していました。
「あ、あの〜…」
私はトトトト、と彼に駆け寄りました。
すると、彼は城下町からふぃとこちらに紅い瞳を向けます。
そんな彼に私は頭を下げ、彼に向ってこう言いました。
「わ、私はヴィヴィス・ラ・アクアマリンです。
あの、わ、私のこと態々探していただいてて、その、すいませんでした!」
「…と、言う事は貴方が———」
貴方がもう一人のパーティメンバー、そう言いかけて、彼は一瞬考え込むように黙りました。
そして私をジッと見つめた後、彼は立ちあがり、自分の手で胸を押さえ、軽くお辞儀をして言いました。
「これはこれは…私、メイレニアスと申します。メイレニアス・K・プライマリー。以後見知りおきを」
「メイレニアス・K・プライマリーさん…」
私は、小さく彼の名前を繰り返しました。と、それと同時に、
自分が迷惑をかけていた事を咎める素振りも見せない、紳士的な振る舞いに、私は思わず縮こまりました。
しかし、その瞬間先程ライラさんに言われた事を思い出しました。
“もうすぐ儀式が始まるので—————”
“もう一人のパーティメンバーの人もいると思うので呼んできてください”
「あ…」
「…どうかしましたか?」
「あの、そう言えばもうすぐ対面の儀が始まるのでライラさんが来てくださいって…」
「あぁ、あの方ですか」
すると、彼はやれやれと言った風に軽く溜息をついた。
「…あの方はせっかちで困るんですよ。それに少々野蛮な所も——」
「ちょっと待てやメイレン。“野蛮”ってのはどう言う意味だコラ」
と、その時ドアの向こうで待っていたはずのライラさんが、ドアを蹴り破る勢いで入って来ました。
そしてその手にはすでに銃。もちろん、彼女が「メイレン」と呼んだ彼の方に向けられています。
「………」
すると彼は腕組みをしながら、表情を崩さずライラを見て一言。
「…貴方のそういう所ですよ」
彼は冷めた表情、冷めた声でライラに言い放ちました。
彼は背が高いせいか自然とライラさんを見下す視線になって、彼女はそれが気に入らなかったようで…
「ア?てめぇ…背ぇ高いからってナメてるだろ?」
何か唐突に彼にからみ始めたんですけど…あの、止めた方がいいんでしょうか?
しかしなぜか彼はライラを挑発するような言い方でこう言いました。
「それは否定しません。しかし貴方は背は小さいものの、態度は中々大きいんですね」
つづく