ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 混沌な主人公は今日も不機嫌なようです。  ( No.42 )
日時: 2011/09/23 13:51
名前: Spade ◆1R8FyXsIeY (ID: OXTNPTt9)




ビキッ、と何か聞こえた気がしました。
ライラさん…ライラさんがすごく怒ってますよメイレンさん…!
てゆうかメイレンさん、想像以上に毒舌…!

ライラさんは銃はこっちに向けたまま、ふるふると肩を震わせて俯いていましたが、
突然キッとメイレンさんを睨んで怒鳴りました。


「っの野郎ッ…!誰がチビだ誰があああああああああッ!!」


ライラさんは完全に頭に血が上った様子で、容赦なく銃の引き金を引きました!
しかしそれよりも一瞬、一瞬早くメイレンさんが動いていました。

「———“スペル=ビア”…!」

彼は素早く何かを唱え、魔法陣を展開しました!
私の見た事の無い魔法陣でしたが、魔法陣の色は『紫』…。


これは干渉系魔法…それも複雑な魔法陣を見る限り、とても強力な———!



思わず目をつむりました。そして、その後に何かが裂けるような音が聞こえます。




…、

が…何も、飛んできませんでした。

『……?』

私は、ゆっくりと目を開きました。
すると、ライラさんの足元。

床にぽっかり、大きな穴が開いていました。それも、ちょうど人が収まるサイズです。

「————ッ!」
ライラさんは驚きの表情を浮かべ、メイレンさんを見て…怒った口調で怒鳴ります。


「あ、阿呆かお前ッ…!あたしが避けてなかったら、あたしがペチャンコだったぞ!」


…そう言われてみれば、彼女は元いた位置より少し後退しているようでした。
そして、彼女の前には人一人分大きな穴。
メイレンさんはその穴を見て、顎に手をやって言いました。


「どうやら、魔法の調節を誤ったみたいですね。重力系は流石に扱いづらい。
 ———しかし、私がこの魔法を発動して無かったら貴方は殺人罪で今頃捕まっていた所です。よかったですね」


そう涼しげに言う彼に、一瞬寒気を覚えました。

彼が重力系は———と言った事から、あの魔法が重力系だという事はわかりました。
おそらく彼は弾丸に大きな重力をかけ、弾丸が発射される前に銃ごと床に落とすつもりだったんだと思います。
しかし、そのターゲットとかける重力を誤り、ライラさんを危うく潰しかけた…
そう言う事なんだと思います。

そしてライラさんはメイレンさんのその言葉を聞いて、「お前のミスでこっちも死にかけたんだよ!」と一言。
しかし彼女はそのまま目線を落とし、床に開いた深い穴を見つめていました。

『…、ええとコレは…』
私はこの何とも気まずい空気を変えようと、何か話題を頭の中で探しました。
そして苦し紛れに出てきたのは、この言葉でした。



「あ…あの、ふ、二人はその———知り合いなんですか?」



さっきから会話を聞いていれば、どうも初対面同士ではない気がしました。
しかし、その言葉を聞いてメイレンもライラも、ほぼ同時に口を開きました。


「ソイツとはアンタを探す前に集合場所であるここで会って、かるく顔合わせしただけだ!」
「あの方とは貴方を探す前に集合場所であるここでお会いして軽く挨拶と会話を交わしただけです」

そしてメイレンさんは溜息をついて、もう一言付けたしました。


「その時も口論になり、銃を向けられてしまいましたが…」




どうらや、会った時から二人は仲が悪いようです。
しかし、息は案外合っているのかもしれません。(気は合ってないみたいですけど)
私は言葉に出さずに、心の中でそう思いました。





そしてそのすぐ後、警備の人たちが何事かとゾロゾロ入ってきましたが…
私はふと、旅がどうなってしまうのか心配になりました。

———波乱の予感。

そして、あの城下町で会った彼の言葉を思い出します。



“勇者は———…、お前等が思ってる様ないい奴じゃない”

『…、
 あぁ、どうか神様————』

私は心の中で唱えました。





どうか、勇者様だけでも…心のお優しい方でありますように。







つづく