ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 混沌な主人公は今日も不機嫌なようです。  ( No.52 )
日時: 2011/09/24 20:21
名前: Spade ◆1R8FyXsIeY (ID: OXTNPTt9)
参照: すいません、勇者は次に登場させますorz







儀式の始まる数分前————ある3人の男がある場所で話していた。


「…で、今回のはどうなんです?アタリですカ?」
「——うんにゃ、国王は何を思ったか知らねーけど、ありゃ駄目だな…餓鬼ばっかりだ」
「…だが、今更諦める訳にもいかねぇだろ?
 だったら俺等の仲間に引き込んで使えるよう調教してやりゃーいいじゃねぇか!?ッハハハハ!」

甲高い笑い声が、辺りにこだまする。
その狂気交じりの声に、一人のスーツ男は溜息をつく。

「まぁそれも悪かねーけど…けど問題は勇者だな」
「えぇ、私も気になっていた所です。あの方の始末はどうなってるんですカ?」
「あー?んなもん下の奴に始末つけさせりゃあいいじゃねーかよ、面倒くせぇ」
「阿呆、そう言う意味じゃねーよ」

スーツの男は、狂気を交えた男の言葉を制した。
そして面倒くさそうに、考え込むように腕組みした。
すると丁寧口調で話していた男は、困り果てたように溜息をついて言った。

「あの男、相当強いらしいじゃないですカ…“我々の傘下だったあの砂漠の大賊”を一人で潰してくれたんでしょう?」
「そーそ。俺達が返り討ちにあってもおかしかねー訳だ」
「…、へぇ…そんなに強ぇのか?その勇者様って奴ぁよお」
「お強いですよ。まだ聞くところによると20歳だそうですが…」
「は!いいねぇ20歳の器…それも最強と名高い男のねぇ…


 ————その体、俺が奪ってやりたい」


男は虚空を見て呟いた。
とうとう、「自分にあう器」が見つかったのではないかと、高ぶる感情を抑えながら思う。

『早く…その男に会い、体を奪って、この血への飢えを潤したい!』


———、
彼には肉体という物がない。
例えるなら、意思のみの存在である。
彼は特別な魔法を使い、今まで器を使い捨ててきた。自分の考える体の動きと、まるでその器達は合わなかったのだ。
しかし、今回は違うのかもしれない。


この3000年間、長い間探し続けてきた己に合う器が、手に入れられるのかもしれないのだ。


肉体を手に入れる為、彼は——この二人、いや…“この2人が属している大賊”に力を貸している。
…さぁ、今日は愉しい一日になりそうだ。

彼は笑う。
「ククッ…ハハハハ…!」
新しい肉体は、果して自分に相応しい物なのか。
そうでなくても、例の勇者の肉体…居心地が悪い筈がない。




あぁ、早く器が欲しい。




* * *





ちょうどその事、会場は活気立っていました。
対面の儀まで、もう時間は残り少ないです。
部屋の修復が完了し、私達は再びその部屋にて待機していましたが…

「失礼します。時間が参りました、どうぞ皆様こちらへ」

ついに、その時間がやってきました。
私は座っていた椅子から飛び降り、何度も何度も深呼吸しました。


…し、心臓がすごいバクバク言ってる…ッ!


「…さて、行きますよ」

するとライラさんは、私の背中をポンッと押します。
私は慌てて呼ばれた方へと向かいました。


…、
チラリと私はライラさん、そしてその後ろにいるメイレンさんを見ました。

メイレンさんとライラさん。
二人の空気は、先程よりかなりマシになったかと思います。
実はあの後、こんな事がありました。





あの後、ライラさんが一つわざとらしく咳込みをしました。
そして、銃をガンホルダーにしまい、改めてメイレンさんの方を見ます。
そうして、先ほどとはうって変わった、上品で落ち着いた口調で言いました。


「…、すいません、少し頭に血が上ってしまったようです。
 しかしメイレン、貴方も少し発言に気を配ってはいかがでしょうか」

「…」

するとメイレンさんも一瞬押し黙り、それに肯定するように頷いていました。
そして自らも、反省を述べます。

「…そうですね、どうやら私の方こそ少し発言に棘を含んでしまっていたようです。
 貴方を怒らせた原因が私にあるとすれば、それは本当に申し訳ございませんでした。
 以後、発言には十分注意しておきます」

落ち着きを取り戻したライラさん。
反省を述べるメイレンさん。

少なくとも今の二人に、先程の露骨な戦闘心はありませんでした。
私はその様子を見て、ホッとします。
と、少し気を緩めた途端…


グ〜…


「?」
「…おや」
「あ…」

急にお腹が減ってしまいました。
私のお腹が鳴ってしまいました。

「あ…す、すいません。何だかお腹が減っちゃったみたいで…」

私は自分のお腹を押さえて、赤面して俯きました。
すると二人は間の抜けた表情をして、そして—————


「…フフッそうですね、私もなんだか…お腹が減ってしまいました」
「…食事にしましょう。折角料理人が用意してくださったみたいですしね」


二人はそう言って、少し表情を和らげました。
ま、その後床の修理とか何だかんだで部屋を追いだされてしまったけど、再び中に入った後は、3人で食事をしました。



そうして、今にいたります。
取りあえず、お互い反発しあうというという最悪な状況は免れたようです。
私は一人ホッとしながら、会場へと向かいました。