ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 混沌な主人公は今日も不機嫌なようです。 ( No.79 )
- 日時: 2011/10/08 13:48
- 名前: Spade ◆1R8FyXsIeY (ID: OXTNPTt9)
- 参照: 作業は終わっていないのである。
私が会場と言ったそこは、紛れもない———王室の事です。
私が城へやって来た時、私はその扉の重圧感に心底感動したのを忘れません。
そしてその扉の前へ再び、私は二人の仲間と一緒に立っていました。
「———ようこそいらっしゃいました、我王国の誇る勇者と共に道を交える御三方…」
執事の方は王室の扉の前で、私達を見つけると跪いて言いました。
そして彼は顔を上げ、私達を見て優しく頬笑みました。
「今日の良き日に…貴殿方の旅の門出を、我がヴェロンデ国にて『祝典』という形で迎えられる事を誠に喜ばしく存じ上げます」
そう言うと彼はスッと立ち上がり、扉への道を開けました。
ライラさんを筆頭に、私達は扉の奥へと———続きます。
ド ク ン ッ
鼓動の高鳴り。
まるで全身が心臓になってしまったのかと錯覚を起こしそうになります。
そして眩い光を受けながら、その扉は今…ゆっくりと開かれました。
『…っ、とうとうこの時が…』
私は、田舎で一緒に暮らしていたおばあちゃんの顔を思い出します。
私が、ここへ来るのに反対したおばあちゃん。
けど、最後の最後におばあちゃんは———私に言ったんです。
“ いってらっしゃい、また帰っておいで ”って—————
おばあちゃん。
私、私…夢を、叶えれるよ。
今日、この瞬間に—————
「———ようこそ、3人の旅人殿」
扉が開けた瞬間、聞こえたその声。
その声は、優しそうな、少し枯れた声でした。
その声は紛れも無く、私達に向けられた言葉で…その声の主はもちろん…
「国王…様」
私は、思わず立ち尽くしました。
この御方が、目の前にいる方が、国王様…
緊張のあまり、私はもうすでに何をすればいいのか分らなくなりました。
メイレンさんの方を見ると、彼も少し動揺に瞳が揺らいでいました。
すると、ライラさんが一歩前へ出ました。
『ライラさん————?』
すると彼女は私達の方を見て、小さく頷きます。
直後、彼女は国王様に向き直り、跪きました。
「“我々三人は今日、貴殿国の誇る勇者『レオ・レオナルド』殿と道を共にする所存であります。
本日は我々をお選びくださった事を誇りに思い、また深く感謝致します”」
その後方にいる私とメイレンさんもライラさんその姿を見て、素早くその場に跪きます。
すると、隣でメイレンさんが小さな声で呟きます。
「対面の儀…ここは彼女に任せましょう。彼女は礼儀作法に大変詳しいようです」
「は、はい…分りました」
対面の儀。
その儀式で何が執り行われるのかは、その部屋にいる国王様と勇者、そしてその仲間しか知らない。
分っている事は勇者と仲間が対面し、旅の誓いをする事くらいだと思う。
ライラさんはごく自然にこの対応をしていますが…私達は全く知りません。
なにせ、一般人は絶対に知らないはずの事なんですから。
でも———それは私が田舎育ちだからとばかり思ってましたが…どうやらメイレンさんも知らないんですね。
だったらライラさんは何でそんな事知ってるんだろう…?
今までの勇者様は王族や特別な御身分の方が多かったのもあり、こういった貴族的儀式に説明も不要だったのでしょう。
なので私たちはこの儀式で何をすればいいのか皆目見当もつきませんでした。
そういう事もあり、私はライラさんが礼儀作法に詳しい事に驚きました…何者なんでしょう、ライラさん。
「…さぁ、私の横に並んでください」
すると、ライラさん。私達の方に少し視線を向け、そう促しました。
…あれ?案外早いんだ…
私はもう少し、このやり取りが続くと思ってたんですけど…
「…貴方の考えてるとおりですよ」
と、私のそんな表情を見てか、ライラさんが不意に視線を上げました。
「想像以上に早んですよ。まぁ…少し気になりますが、問題無いでしょう。早いにこした事はありません」
「そ…ですか」
私が全く知らない事だったので、私は深く追及はしませんでした。
私はとりあえず一歩前へ出て、ライラさんの隣に並びました。
そして、国王様の方を真っすぐと見ます。
すると、国王様は執事と思われる人に目配せをしました。そして、執事の方は奥の大きな扉の方へ歩み寄ります。
「———では、
ヴィヴィス・ラ・アクアマリン、
メイレニアス・K・プライマリー、
そして、ライラ・サード・スーオン!
ただ今より対面の儀をとり行う。それぞれ前へ出よ」
そして、国王様は私達の方に向き直り、言います。
そう、ついに対面の儀が始ま…
…て、
「えぇ!?い、今から対面の儀ですか…?」
私は小声でライラさんに言った。
するとライラさんは、少し呆れ口調で言う。
「…今までのはただの挨拶です。
対面の儀というのは、ただここで旅の仲間と、そして勇者と顔を合わせるだけですよ?
一体何だと思ったいたのですか…」
「……」
思わず、私はメイレンさんと顔を会わせました。
メイレンさんは『…だ、そうですね』と言いたげな顔で私の方を見ていました。
コホン———
そして、国王は一つ咳払いをしました。
その瞬間、体が一瞬にして強張ります。
———きた。
とうとう、勇者様に、お会いできる瞬間が!
あの噂に聞く、剛腕の剣士に。
「では、勇者 『レオ・レオナルド』———姿を現し、旅の仲間と今…対面するのだ」
————ギィ…ッ——
扉が開く。
ゆっくりと、ゆっくりと開き…
そしてついに、
勇者様が私達の目の前に現れたのです。