ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: シンクロニシティ ( No.1 )
- 日時: 2011/09/13 20:25
- 名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)
【1.プロローグ】
また、新たな春が来た。
桜で埋め尽くされたアスファルトの上、川沿いの道を2人の男子高校生が並んで歩いていた。
制服の胸部分には、東京都内で有名な坂咲高等学校の校章が刺繍されてある。
「またメンドクサイ授業が始まるなぁ。課外の授業なんて絶対きつそうだな。」
「ははは、そうだね。」
学校指定の鞄を背負い、爽やかな短髪が春風で靡く。前田恵太は、愚痴を友人に向かって言う。
恵太と同じクラスメイトであり幼馴染である小坂守は、眼鏡を掛け直して、笑いながら受け答えした。
「メンドクサイけど……もう2学期かぁ。早いよな。」
「昨日学校に来た感じがしないわけじゃないね。」
「後、半年で高校3年生になって受験。今頃になって、高校生活は早いっていうことが実感するわ。」
恵太は半笑いで言うと、鞄から黒いビニール製の腕章を取り出す。
腕章には‘坂咲高等学校 生徒会執行部’という刺繍がある。
守は腕章を見ると、優しく微笑んだ。
「生徒会長選挙、順調?」
「ボチボチだな。やっぱり俺以外にも有望な立候補者がいるからな。」
「まーた、そんな弱音吐いてるぅー。」
2人の間に、強引に1人の坂咲高校の制服を着た女子生徒が割り込んできた。
「まき。お前、もう部活終わったのかよ。」
2人の間に割り込んできたのは、恵太と守の幼馴染である八野まきだった。
まきは満面の笑みで恵太を見ると、恵太の持っていた腕章を取り、恵太の胸に押し当てた。
「恵なら絶対、絶対に会長になれるよ。自分を信じて、頑張って。」
恵太はまきの言葉を聞くと、真剣な眼差しでまきを見て頷く。
「じゃあ、私はこれから友達と買い物に行くんで。ばいばーい。」
まきは2人に手を振りながら、物凄いスピードの速さで走り去った。
恵太と守は、まきの足の速さに呆然とする。まきは、日本で4番目に足の速い女子陸上部の勿論エースだ。
「……制服でスカートなのにあの速さ。化け物だな。」
「僕らも‘似た様’なものですけどね。」
守は冗談交じりに言うが、恵太は冗談を冗談とは思っていなかった。
恵太は左手を拳にして前に出すと、勢いよく開いた。
ボゥ!!
皮膚から、直に赤い炎が発火した。しかし、恵太は熱さも何も感じない。
その非現実的な光景を前にして、守は表情をピクリとも変えなかった。
「こんな超能力、別に使うことなんかない。神っていうより、悪魔からの贈り物だな。」
「弟さんの能力ですよね。弟さんは……その、少々荒っぽい部分があるから気をつけないと。」
「流石にそれは、京志郎も理解してるよ。こんなの世間にバレたら、俺らは世界から追放されちまうかもしれないしな。」
恵太は足を止めると、川沿いの道をコンクリートの階段から下りて鉄橋の下へと向かう。
身の丈よりも伸びている草むらを掻き分けると、生い茂った草も何もない河原が出てきた。
「やっぱり!!ここは最高だな!!!」
鉄橋の下で生い茂った草むらで隠れているため、この場所は誰も知らない。2人だけが知っている。
恵太は靴と靴下を脱ぎ、ズボンを膝まで捲りあげると、透き通った川に足を突っ込んだ。
「くぅー!!気持いぃぃぃ!!!!!」
守も同様に足を川に突っ込み、2人並んで川の向こうの青い空を見る。
超能力者
例え、超能力者であっても人間には変わりない。
泣く事だって笑うことだって、悲しむことだって怒ることもある。
冷たさだって感じる。青い空を見て、青春を過ごすこともできる。
2人は当たり前の様に思っていた。これからも、こんな生活が続くのだと。
しかし、すでに歯車は動き始めていた______