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Re: シンクロニシティ─パンドラの箱─ ( No.7 )
日時: 2011/09/19 09:58
名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)

【5.襲撃、生徒会】

1階の生徒会室に戻ってきた4人は、それぞれのデスクに座った
生徒会室には5つのデスクがあり、部屋の奥は会長専用のデスク。後は副会長、庶務、会計、書記のデスクが並んでいる。
全員が席に着くと、恋奈は恵太、風雅、竜神の顔を見る。
「警察の方に言われた通り、今日から生徒の監視を始めるわ。出来る範囲で行って。後、決してばれないように。」
「でも先輩、どうして僕たちにやらせるんすか?警察の人がやった方が良いんじゃないですか?」
風雅の質問に恋奈は首を横に振って答える。
「警察の監視の下の学校生活なんて、生徒たちが安心して送ることができないし授業にも影響が出る。教頭の判断よ。」
恋奈の説明で風雅は納得できたようだが、竜神は未だに納得できていなかった。
「餓鬼の監視を餓鬼がやれと、しかも校長ではなく教頭の判断。俺はしないぞ。副会長さんよ、俺はパスだ。」
竜神は恋奈にそう言い残し、生徒会室から出て行った。
「………黒丸は口では言っても、やる人間だから大丈夫。」
恋奈は恵太と風雅に優しく言う。
「でも、さっきの光景凄かったな。まるで映画みたいだったよな。」
「確かに凄かったね。事故じゃなかったら、一体誰の仕業…………」





        「超能力者。」





ふと、恵太の耳に女性か男性かも分からない声で、囁くように聞こえた。
恵太は辺りを見渡すが、生徒会室の中には風雅と恋奈以外誰もいない。窓もドアも閉まっている。
「……気のせいかな。」
恵太は徐に立ち上がり、大きく背伸びをした。その瞬間だった。

「波岡君、棚の上の箱は何?」

恋奈は風雅と恵太の後ろにある木製の3段棚を指差した。
普段は荷物置きに使用している棚。一番上の段に小さな白い箱が置かれてあった。
「なんですかね?取ってみます。」
風雅は棚の上の箱に手を伸ばし、静かに掴み上げると、自身のデスクの上に置いた。
箱には「割れ物注意」というシールが貼られているだけ。
風雅が恋奈の顔を見ると、「開けてみて」と恋奈は言った。
ガムテープをはがして箱を開けると、中には無数のビー玉に埋もれた指輪ケースぐらいの箱があった。
「なんだよこれ……開けてみますよ。」
風雅がそう言いながら、指輪ケースぐらいの箱に手を近付けたその時だった。




      ──────シュゥゥゥゥゥゥゥゥ





その箱から突如、大量の白煙が溢れ出してきた。

「きゃ!!」

「うわっ!!」

箱を持っていた風雅は、驚きのあまり床に尻もちをつく。その拍子に箱はデスクの下に落ちてしまった。
「部屋から出ましょう!!危険な薬物かもしれないわ!!」
恋奈は2人にそう言ってドアへと駆け寄る。その直後だった。
白煙が一瞬にして生徒会室の中を飲み込み、完全に3人は視界を失った。と同時に、誰かの声が聞こえた。


「ちくしょう!!大人しく捕まれよ!!」


男性の声だが、それは恵太と風雅の声ではなかった。
声が聞こえた瞬間、「きゃっ……」と恋奈の小さな悲鳴が聞こえたかと思うと、「うっ!?」という風雅の呻き声も聞こえた。
明らかに、何者かに攻撃をされていた。
恵太は身をデスクの陰に隠し、シンクロ能力で京志郎から得た発火能力で、左手を炎で包み込んだ。
「やっと黙ったか……さっさと行かないと、まだ怒られちゃうよ。」
恵太の耳に先ほどの声が聞こえた。真正面からだ。

「うらぁぁぁぁ!!!」

恵太は声を上げながら、真っ赤な炎で包まれた左手で見えない相手を殴った。その瞬間だった。


「ぎゃぁぁぁぁ!?」


白煙の中に一瞬だが、男子生徒が見えた。男子生徒は気絶した恋奈を抱えている。
「誰だ!!花城先輩を返せ!!!」
「ぐっ……くそっ!!!」
男子生徒は顔を俯かせたまま、体を白煙に変えて走り出す。
そして、そのまま窓ガラスを突き破って、恋奈を抱えたまま外へと飛び出してしまった。
「おい待て!!!くそっ、ちくしょう!!!」
恵太は割れた窓から外を見るが、すでに白煙に変わった男子生徒も恋奈の姿もいなくなっていた。
生徒会室を包み込んでいた白煙はいつの間にか晴れ、床には風雅が頭から血を流して倒れていた。

「風雅!!大丈夫!?」

「うっ………だ、大丈夫……」
風雅は一言そう言うと、そのまま気絶してしまった。
恵太はもう一度、割れた窓の方を見た。
あれは明らかに人間ではない。この坂咲高等学校の制服を着ていた男子生徒だったが、あれは能力者だ。
「……この学校、能力者が多すぎる………」
恵太はそういうと、風雅を抱えて生徒会室を出たのだった。



 * * * * * * * *



高校の屋上。空から白煙が舞い降り、その中から恋奈を抱えた男子生徒が出てきた。
「おいおい、永尾。さっきの窓ガラスが割れる音は何だよ?」
恋奈を抱えた2−3の生徒である永尾釜彦は、息を切らせながら恋奈を置く。
先ほど恵太に喰らった攻撃で火傷した左肩を見る。左肩の部分だけ制服が燃え尽き、火傷した皮膚が露になっている。
「や、やられた……俺らの他にも能力者がいたんだ………………」
釜彦は目の前に立っている同じクラスで友人である、司馬冷斗に言った。
綺麗な白肌で髪が若干青い冷斗は、釜彦のその言葉を聞いて表情を変える。
「詳しく聞かせろ。」

「恐らく、生徒会で2−9の前田恵太って奴。今、会長選挙に出てるあいつだよ。手を炎に変えて殴ってきやがった。」

釜彦は左肩を手で押さえながら、痛みに耐えながら冷斗に言う。
冷斗は不気味に微笑むと、両手から冷たい冷気をジワジワと出す。
「炎と氷。どっちが強いか試したいな。」
「とりあえず、これからこいつを運ばないと。怪我の手当てどうすればいい?」
釜彦が尋ねると、冷斗は少し悩んでから言った。
「保健室には行くな。運が悪ければ気づかれる。黙って帰って、なるべく遠い病院に行け。」
「わ、分かった。後は頼む。」
釜彦は左肩を押さえたまま白煙に化け、そのまま屋上から飛び去った。



「この学校、やっぱ普通じゃない。」



冷斗は笑いながらそう言うと、気絶した恋奈を抱えて屋上を後にした。