ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 愛しているの ( No.4 )
- 日時: 2011/09/14 23:02
- 名前: 葵沙 ◆7ZaptAU4u2 (ID: /iUvxDbR)
放課後。研究授業で運良く彼等の教室は部活無し、四限に終わる事に。当然クラスメイトも人知れずルナも内心、喜んだ。
ルナはクラスに馴染んでいない。疎外されている、という言葉がぴったりの云わば人と馴染めない人間だ。良くいる人間である。
しかし、ルナは違う。人間が嫌いなのだ。人間を嫌う余り孤独を愛し、自分しか信じない性でいた。
理由は分からない。とにかく彼女が〝人間嫌い〟なのは、事実だった。そうして早く帰ろうとした矢先。
何故か、莉絵に足止めされた。一気に不機嫌になった。早く帰りたいのは、〝奥村廉〟こと廉も同じらしい、やはり苦笑いだ。
三人だけとなった教室。人気もない。
早く帰りたい、と視線で訴えたら、莉絵の勝ち誇った嫌味な笑顔で、その赤い唇から、言葉を出す。
「ねぇ、今度三人で遊びましょう!」
——— 言葉が出る処だった。
目の前に教室で最悪な性格の同級生と噂される少女が言うものだから。遊びたい相手がいないのだろう。彼女もまた寂しい人間だ。
自分と境遇は似てるけど、思想が全く違う。同類と見られるのが酷く不愉快だと思ったルナが、溜息を零す。
「お前………なんか、可哀想だな」
廉の同情めいた眼差しが送られた。莉絵の顔が赤く染まる。
「違うわよッ!友達ぐらい、ちゃんといるわ!ただ、アタシはアンタ達と遊んだら、どんな休日を過ごし、どんな生活を送ってるか、分かるんですもの!これ程、面白い事はないし!分かったら、早く日程を決めやがれ、ボケカス共………ふん、分かったわね?」
言葉の語尾が暴言に変わっている。
廉がルナの耳元でいつもの事だ、と優しく諭してくれた。
携帯を弄ってる莉絵が、十八日が空いてると言う。ルナは別段これと言った予定がない。
廉も同じ様子だ。莉絵の勝ち誇った笑みが——— 恨めしく見えた。
「まあ、いつでもメールをしなさい。あ、これアドレスだから」
手渡された白い紙を受け取った。アドレスは〝好き好き大好き莉絵〟というアドレス名。自分の事がそこまで好きらしい。
莉絵は満足気な表情をし、そのまま教室を出て行く。
——— 教室に二人、残される。
廉が、引きつって乾いた笑い声を出しながら、ルナに対し同情めいた言葉を続けた。
「莉絵、あいつは一体何を考えてるんだろう。産まれた時から一緒にいたけど意味分からんわ、あ、京都弁が混じっちゃったね。俺、母さんの実家が京都なんだ。だから時々混じるんですわ、不愉快やったら、ごめんね。とにかく、莉絵は素直な性格じゃないし、友達が出来にくいんや。堪忍してね——」
そう言い残し、彼も鞄を背負って出て行った。
時刻は一時五分。
一時半には出ろ、と言われてるのでルナも早々と教室を出て行った。
教室の窓辺から、淡い暖かそうな光が一筋、射し込んでいる。
———— 今日も暑くなりそうだ。
■
とんとん、と軽やかでスキップのような足取りを乾いた地面に歩く。
風で淡い茶髪の綺麗に纏められたポニーテールが揺れる。
不敵で気強い笑みを満面に浮かべた少女、莉絵だ。今日は機嫌が良いらしい。いつも理不尽で身勝手な自己主張を述べている。
なので、彼女に〝友達〟らしい友達は〝廉〟だけだった。
それに、弄りがいのある同級生、天城ルナも今週末遊ぶ予定になっている。今のところは、だが。
だけど、すこぶる機嫌が良い。
「ふふ……。廉とまた遊べる、天城を身近に観察できる、今月はラッキーな事ばっか!アタシは性悪なのは自覚済み。というか、生まれたころから知ってるわよ。人を傷つけるのも観察するのも、大好き。サディストやら、ドSやら、何とでもおっしゃい。だけど変態とか言ったら、今すぐあの世に送り返してやるわ。さあて、今日も観察、観察っ!」
独り言を呟く。横をすれ違う人や周囲の人間の視線が感じる。
それでも、莉絵の独り言は続いた———
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