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Re: 愛しているの ( No.5 )
日時: 2011/09/17 13:57
名前: 葵沙 ◆7ZaptAU4u2 (ID: /iUvxDbR)







——— 何の為に生きているのか、分からない。

誰しもが、一度は考えたことがあるだろう言葉、思想、感情。現時点でそう思っている。理由はとても単純で家庭不和が原因だ。彼等曰く百点は取れるテストで九十点しか取れなかったから。
それで両親は大激怒した。彼等は自分の将来の為とか、世間体だとか、等。
自分の願望、自己満足をルナに押し付け、無理やり勉強を強いれて、結果、ルナが人間関係が全くできない人間になれば、彼女を責めた。
自分達が奪った挙句、決まり言葉は〝私達の為に頑張って〟なのだ。
心底で憎くて鬱陶しくて仕方ない両親でいた。ルナの不機嫌が増す。

「聞いているのか!」

お決まりの言葉で右頬に痛みが走る。平手打ちされたのだ。
これは、まだ序の口。酷い時は腹を何度も蹴りあげられたりする。母は一切その行為に咎めも止めもせず、見て見ぬ振り。
狂った家庭だ、と他人事のような眼差しで彼等を見ていた。酷く父の説教と言う名の怒鳴り声が煩く聞こえた。
莉絵と彼等のどちらが性悪の勝負をすると、良い勝負。というか彼等の方が圧倒的に圧勝しそうな感じだ。
父は暖かな暖色系のソファーに座り直す。身を沈めるように埋もれる。母も隣で白いハンカチを爪で抉って嘆く。
傍らの棚に写真立て。〝家族四人〟の写真———。

「どうして〝ルイ〟みたいになれないの!どうして!ルイは良い子だったのに!運動もお勉強も何でも出来たわ!だけど……うぅ!どうして、どうしてルイが死ななければいけなかったの!?何でアンタはそんなに、出来損ない———」

責め立てる母の肩を自分の方へ寄り添い、支える父。母は父の腕の中で泣く。哀れ、と感じる。何て哀れな人間だろう。
自分達が、兄を〝追い詰めた〟癖に、だ。
兄は優秀な人物だった。明るくて秀才でそれで謙虚な性格だった。だから、両親に溺愛され、ルナは疎外されて育った。
けれども、兄は決してルナを疎外せず、暖かく平等に接してくれる。そんな優しい人間でいた。
でも、兄が恋に落ちた。その人物は少年院から出て過去の罪を償い、今は立派に更生中の同い年の子だ。
当然その子と交際するのを二人は反対した。兄は追い詰められ、恋人は兄の為に自殺。兄は彼女の死後、狂って後追い自殺を成し遂げた。
それ以来、両親の過大な期待、願望、自己満足を一心に背負う羽目になったルナが、今、二人に責められていた。

「可哀想だね」

何となく一言、呟いた。

「何を!?」

茹でたタコみたいに顔を赤くする父。


「だから、可哀想だねって。お父さんとお母さんは何にも分かっていない。兄さんが死んだのは、二人の所為で死んだんだ。ね、分かる?罪を償おうとしている人間に屑だと言った。兄さん、激怒したでしょ——?つまり、兄さんはそんなアンタ等が大嫌いだとあの後、あたしに言ったよ。だから———— 可哀想だね、って」


二人の顔が青ざめる。ルナは構わず、二人を残しリビングから出て行った。階段を上る途中、母の呻くような悲鳴が聞こえてきた。





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