ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 追憶と花束 ( No.1 )
日時: 2011/09/20 20:39
名前: 雅 (ID: MDsdSaXn)

Memory1 MOTHER



2×××年。
世界は破滅的危機に追いやられた。

人口爆発による急激なる人口の増加。
政治家たちはそれをなんども食い止めようと試みたが、それも失敗に終わった。
人口増加による食糧と水不足。
人口密度は増え、さらには小規模だったテロが大きな戦争へと変化していく。

日本は連合軍と共に戦い、結果戦争では敗北をした。
敵軍のヘリが日本へと爆弾を落とす。
日本は火の海にのまれて、世界地図からその存在を消した。



————3年後


『———い、おい! 応答しろ! 聞こえているのか!』

「聞こえてるっつの。いちいちうるせぇな」

耳に付けていたインカムの電源をぶちりと切った。
そのインカムをぼんやりと見つめている青年の表情は、まさに「無」だった。
嬉しい、という感情でも、怒りでもなかった。
艶のある黒と、薄い茶色が混じったクセのあるショートカットの青年は、薄気味悪く舌で何度も唇を舐めていた。
青年の形の良い唇が、何度も動く。しかし、その声帯から声は一度も発しない。

青年、こと八雲は、ごく一般的な「元日本人」だった。
普通の家庭に生まれ、ただ普通な生活を送っていたはずだった。
しかし彼は、3年前のあの戦争で疎開し、両親と離ればなれとなった。
それ以来八雲は、冷徹な人間になっていた。

「なぁ、八雲。お前今日の任務内容、本当に分かってるのかよ?」
ふいに隣から声がして、隣の人物と視線を合わせた。
丸い目に長い髪。そして低身長。幼い少女を思わせる「少年」が八雲の隣をずっとついてきていたのだ。
「…分かってる。「母体」を潰すんだろ」
「分かってるなら別にいいけど…」
「ならいちいち話しかけるな。煩い」
「……」
それきり、少年は何も話さなかったけれど、八雲はそれで満足していた。


数時間前。

八雲が所属する、反抵抗組織「壊(カイ)」は、慌ただしく動いていた。
八雲を含め、この組織はわずか13人で構成されている。
その中の一人は、指揮官。いわゆるこの組織を作った張本人。
八雲はこの組織員の中でも最も一番に入隊した人物である。
しかし彼の実力は未知数であり、何かと謎も多かった。
「おーい、皆いるかー?」
野太い男の声が廃墟内を響かせる。
顎からもみあげにかけて髭を生やし、口元に一本の傷口がある。見た目は30前後の男。
彼、千里こそがこの「壊」を作った張本人だった。
「よく聞け、「マザー」の場所が分かったんだ」
千里の言葉に全員が凍りつく。
「マザー」というのは、言葉そのままの意味。すなわち「母」を意味する。
この地、「元日本」は世界地図から姿を消したものの、小さな面積で人々は生活をしていた。
通称、「エデン」と呼ばれるドームがこの地に存在する。
エデンもそこまで大きなドームではないため、住んでいる人間はごくわずかではあるが、ドームの中は本当に「エデン」と呼べるものだった。
何度か八雲はエデンに潜入したからこそ分かるのだが、ドーム内は食糧も水も豊富だった。
人工的ではあるが花も咲き誇っており、ドームの外とは大違いの世界だったのを八雲は知っている。
「マザー」はそのドーム内の機械を全て管理している、いわゆる「大地の母」とも言うべき存在。
反抵抗組織「壊」は、その「マザー」を破壊するために構成されたのだ。
勿論壊さないわけにはいかない。

が、謎と言えば謎はある。
何故千里は「マザー」を壊そうとしているのか。
しかし無関心な八雲は疑問に思ってはいるものの、そこまで気にしているわけではなかった。
「マザーはエデンの地下、「ゲヘナ」にある。……決行は2時間後。心して準備しておけ」
千里の笑みは、やけに不気味だった。
千里の笑みに、誰もが凍り付いていた。 八雲を除いて。

・ ・

決行まで残り一時間。
慌ただしく動く人たちの合間をぬって、八雲は千里が居る場所へと向かっていた。
八雲の予想通り、千里は建物の外にいた。
「よぉ、千里。…マザーの破壊はあんたの一番の望みだっていうのになんつー面してんだよ」
千里の表情は、どことなく儚い印象を見せていた。
いつも八雲をみるそのオレンジ色の瞳は微かに揺れている。
「あんたがどんな過去を持ってるかなんて俺には知ったことじゃない。
 …言いたいことがあるんだったら言っておいた方が良いぜ」
「……お前は本当に他人の心情を探るのが得意だな」
「得意なんかじゃねぇよ。…あんたの気持ちが顔に現れすぎなだけだ」
千里はポケットから煙草を取り出して、ライターで火をつけてそれを口元まで近づける。
「…なんでもないさ。…お前はお前の目的を果たせばいいんだ。八雲」
「おいおい、あんたまで「その呼び方」なのかよ?」
「お前がそんなだから、調子が狂うんだ」
「いつものことだろ。『八雲』」
千里は少し困った顔をしたが、それも一瞬の出来事。
煙草が地面に落ちて、「ジジ…」と音を立てた。

「千里」の唇と、「八雲」の唇は小さく触れ合っていた。



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後書き

とりあえずmemory1−1終了です。
才能のさの字もない私が書いた結果がこれです。

……正直言って。

くだらねぇ!\(^o^)/