ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 追憶と花束 ( No.2 )
日時: 2011/09/20 19:59
名前: 雅 (ID: MDsdSaXn)

MEMORY1の続き。
名前がごっちゃになってますが、3人称はいつでも、
「八雲」→「八雲」
「千里」→「千里」のままです。





突然の出来事で正直頭はそれを理解してなかった。
でもはっきりと分かったのが、「それ」だった。
「……あんたいつからそういう趣味持ったんだよ」
八雲は離された唇を小さく開いて息を吐いた。
千里は少しだけ驚いたような顔をしていた。それから八雲の頬に触れて、呟く。
「……あんた今、俺を『八雲』って…」
「あ?それがどうしたんだよ」
「いや、だから。…『八雲』はお前の…」
「その名前はお前が勝手につけた名前だろ。…その名前はお前の「もの」なんだろ?」
「……」
「…そして、『千里』こそが俺の「本当の名前」。———今更隠すこともねぇぜ」
「お前、記憶が…」
「戻っちゃいねぇよ。いつでも俺とお前は、「こういう関係」のままだ」
八雲の表情はどことなく愉快そうだった。
八雲は千里の手を無理矢理に引っ張って引き寄せ、そのオレンジ色の瞳の上に小さくキスをした。
「……そんじゃあ、俺は行ってくるから」
俺が建物に戻っていく間に、千里はずっとその場所に立ち尽くしていた。



建物内に入ると、少女のような「少年」が八雲の前に立っていた。
「蒼空(ソラ)か。…どうした?」
「八雲!」
「うわっ!?」
蒼空、と呼ばれた少年は急に八雲の腰辺りにしがみついてくる。
「おい、蒼空…」
「八雲は、……千里さんとどんな関係なんですか…?」
「……」
……やっぱり見られてたか。
説明が非常に面倒くさい。八雲は溜息をついて、蒼空を引っぺがす。
「俺と千里はただの「隊長」と「隊員」の関係だ。それ以外のなんでもない」
「で、でもっ…」
「いちいちうるせぇな。その喉かっ切るぞ」
最後の言葉に蒼空が怯えて逃げ出す。「くだらない」と八雲は唾を吐く。




———そして現在に至る。
現在地はゲヘナ一階層。地下水路を通れば簡単に行けてしまうのが少々どうなのかと思ったりはする。
まぁ、結局こちらが得をしているのだから良いのだが。
ちらりと蒼空を見ると、蒼空の持つハンドガンが微かに震えているのが分かった。
———緊張、しているのか。
そんな蒼空を放って、八雲はどんどんと奥へと進んで行った。
汚れ一つない白い壁が何処までも続く。
迷路のようで、気持ち悪い気分がする———わけでもない。

たとえるのなら、それは「不可解」。
エデンの地図は情報で回ってくるが、ゲヘナの地図なんて情報では回ってきていない。
しかし何故か八雲は、「正規」のルートを通っていた。
八雲の頭にゲヘナの地図が浮かんでいたわけではない。
「ただ普通に」進んで行ったのに、何故か迷うこともなかった。
———俺は、過去に此処に入ったことがある?
一瞬思ったが、同時にありえない、と思った。
そもそもゲヘナに入ることが初めてなのだから、それはない。
仮にあったとしても俺には2,3年前の記憶なんてもう「無い」のだから、ゲヘナ内の地図を覚えているはずもない。
とにかく進むしかない。

次に八雲が歩みを再開させると、後ろから爆音がした。

「うわあああああああああああああああああ!」
「!?」
驚いて後ろを振り返る。
煙と炎。
その奥に見えるのは、 「燃えた蒼空」。
「蒼空!?」
「うああああああああ、あああああああ! 熱い! 熱いいいいいいいいいい!」
まるで暴れ狂うヒトの如く。
近寄る気にもなれない。

蒼空は罠にかかった。
でも蒼空はずっと俺の後ろを歩いていたはずだ。
なのに、なぜ蒼空が先に罠にかかった?
本来なら、俺がまず罠にかかるべきだろう。

おかしい。
やはり。

何かが、おかしい。



———————
後書き

memory-1−2もエンドです。
蒼空君がいろいろ不憫でした。なんかごめんなさい。
3か4で終わるかな?って考えてます。
それでは!