ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 追憶と花束 ( No.3 )
日時: 2011/09/20 21:20
名前: 雅 (ID: MDsdSaXn)

やっと終了だい…。





それからも、俺は一度も罠にかからずにゲヘナの最深部まで辿り着くことが出来た。
其処に辿り着くまでに、監視カメラが何台もあった。
警備のロボットだっていくつも発見したのに、どいつもこいつもまるで俺を相手にしなかった。
警報音も発さなければ、様子を観察することもしない。
——— 一体、どうなっているんだ?
さらに歩みを進めていくと、八雲は一つの壁にぶち当たった。
白い扉に、明らかなパスワード入力の為の機械。
ボタンには、それぞれА〜Zまでが並んでいた。……が、生憎俺はパスワードを知らない。

けれど自然に八雲の指は、「MOTHER」と入力していた。




嗚呼、待っていた。

俺はこの時を待っていた。

一体、何年このときを待っていたのだろう?

1年? 2年? いや、……もっとだろう。

今度こそ。

今度こそは。


絶対に————————




パスワードは正解だった。
白い煙を立てて、扉は音も立てずに開いていく。
……やっと、「マザー」を破壊出来るのか。
自分の足音がやけに煩く感じる。
自分の呼吸の音がやけに大きく聞こえる。
何故。 どうして。

「……」

大きな部屋に出た。
細長いドームのようだった。

けれど、その部屋には何もなかった。

「よぉ、ちゃんと辿り着いたんだな」

一人、中央に男が立っていた。

「……千里」
「やっぱりあんた「一人」が此処に来たか」

意味が解らない。
千里の言葉が分からない。

————ドォン…

「あ……?」

突然、視界が赤くなった。
それと同時に、胸に痛みが走った。
————銃弾が貫通している。

撃ったのは、紛れもなく 『彼』 だった。

痛みによろけて、溢れる血を止めようと右手でしっかりと胸元を押さえる。

「てめぇ千里! 俺に銃を向けるたぁどういう了見だ!?」

「…許せ。これも全て、お前の為なのだ。「マザー」。」

「は……何、…言ってんの、…?」

謎の笑みが零れる。
嗚呼、何故。
何故———?

「俺が、…マザーだって? …意味わかんねぇよ…!」

千里の顔から、儚さが生まれる。
嗚呼、
何をそんなに悲しむのか。

「何で、何でなんだよ……?」

視界がぼやけて、何も見えなくなっていく。
こんなことで、何故俺は死ななければならないのか。
どうして。どうして。








「俺は、永遠に君を愛す—————」






『彼』が手向けた『花束』の意味を、俺は理解できない。







—————3年前。

いつから俺の人生が変わったのか、分からない。
気付いた時にはもう、遅かった。

「八雲。……私は貴方を愛しているわ」

「ああ、千里。……俺も、いつだって君を愛しているんだ」

俺の『妻』である『千里』は、とても穏やかで優しい『女性』だった。

「ほら、私のお腹。…また動いているわ」

「早く、生まれると良いな」

「ええ。楽しみにしていて」


平和だったのに。平和だったのに!


「千里に「マザー」を埋め込むだって!? ふざけるな!
  千里のお腹にはまだ、生命があるんだぞ!」

どうして人は、生きるためならこんなにも汚いことも平気でやってのけられるのだろう。
どうしてこんなにも人間は、汚いのだろう…。

「……仕方ないわ。これも命令なのだもの」

「千里! 嫌だ! 待ってくれ!」


「八雲。……私は、永遠に貴方を愛す————」


それから、千里の体内には「マザー」という最悪の兵器が埋め込まれた。
千里は強制的に研究所生活を強いられ、俺と会うことすらもままならなかった。
そんな絶望の中で生まれた、俺達の子供。
出産と「マザー」への負担による、千里の突然の死。
そして千里の体内にあった「マザー」は俺達の子供の体内に埋め込まれる。
「マザー」による急成長を遂げる、我が子。
研究所を抜け出してきた彼の姿が、今でも目に焼き付いている。
黒と茶色の髪。少しクセのあるヘアースタイルが、千里にそっくりだった。
そしてその青年は小さな笑みを浮かべて呟く。

「ハジメマシテ。……「ワタシ」の名前は何?」

その時に分かった。
「マザー」が千里の意志を継いでいたことを。
しかし俺は、もう彼女に辛い思い出を思い出させたくない。

「…お前の名は、『八雲』という。
   俺は、『千里』という。……お前の父親だ」

「そう。———宜しく」


そう言った彼の儚げな顔を、俺はいつでも覚えている。



MEMORY1-END
———————
後書き

まずはさくっとこんな感じです。
ストーリーがごっちゃでいまいち自分でもよく分かってません。

ようするに…。

千里&八雲→結婚

千里→マザーを体内に

千里→出産、死亡

子供(のちの八雲)→マザー(千里の意志)を継ぐ

八雲の記憶隠蔽→のちの八雲の記憶喪失した記憶の部分。

お察し下さい。

まぁこんな感じ。
子供は実際年齢3歳ということです。幼い!

MEMORY2も良かったら見てやってください。
感想くれると嬉しいです。