ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: それはきっと愛情じゃない。 ( No.28 )
- 日時: 2011/10/08 20:26
- 名前: 柚々 ◆jfGy6sj5PE (ID: SAsWfDzl)
- 参照: (^ω^)ここ三日間ずっと鼻声なのがお悩み。
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僕は彼女のことが好きだけれど、きっと彼女は僕のことが好きじゃない。
彼女は僕のことを男だと思っていないのだ。それに限る。
けれど僕は彼女のことを諦めることができない。彼女が僕を男として見ていない。それはとても辛い現実で、この細い両腕では受け止めきれないほどの大きな負の塊だ。しかもそれを自分で認めなければならないとなると、涙が溢れてくる。その涙を隠す為に何度もまばたきを繰り返しても、涙腺は緩んだまま。なので涙を零さないようにするため、僕は瞳を閉じた。
そうすることによって作られた暗闇の中で、彼女が微笑む。その笑顔が愛しすぎてたまらないんだ。なのにどうして、僕を見てくれないのだろうか。
僕が中学生だから? 歳の差は、愛を亡き者としてしまうほど強い概念だったろうか。むしろそんなものは、愛によって打ち砕くことができる。僕は来月、十四歳になる。彼女は先月、二十六歳になった。しかし彼女が僕より何年早く生まれていようが、僕には彼女を愛することができる。きっと誰よりもそうだ。
僕が彼女の生徒だから? 彼女は教師で、僕はその生徒。彼女は美術部の顧問で、僕はその部員。彼女にとって僕はただの生徒で部員で、僕にとって彼女は初恋の相手。互いを見つめる視線は平行に進み、永遠に交わることはないというのか。けれど僕には、彼女を振り向かせる自信がある。きっと誰よりもそうだ。
だからきっと大丈夫。
僕と彼女は結ばれる。
もし、神様のいたずらや、何かの間違いによって僕と彼女が結ばれなかったら、僕はどうなるのだろうか。歳の差や立場に敵わなかった恋心はどうなるのだろうか。きっとどうにかなってしまって、僕は涙を流すのだろう。涙を流してどうなるのだろうか。それで僕は、きれいさっぱり彼女への恋心を捨てられるのだろうか。
分からないことがこれほどまでに怖いものだったなんて、思いもしなかった。
それに比例して、分かってしまうことも怖くなる。
「璃央……さん」
彼女の名前を口にする。
そうした瞬間に高鳴りだした鼓動が妙に愛しくて、僕は彼女を抱いているかのように、自分の体を抱きしめた。
両腕で、ぎゅっと、自分の体に腕を回す。
ふいに花の香りが鼻をくすぐったので、そこで僕は瞼を押し上げる。
恋の病は治らない。
*