ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: crazy diary ( No.39 )
- 日時: 2011/11/11 20:28
- 名前: hei (ID: Fa1GbuJU)
第三話
俺がいる教室の窓の外からは、蝉の鳴き声が聞こえてくる。
今日は七月二日。夏休み前だ。
期末テストも終わり、俺は憂いの無いのんびりした生活を送っていた。
(眠いな…。)
本日最後の授業を俺は、机の上の教科書に突っ伏し、欠伸をしながら受けていた。
幸い後ろの方の席なので、教師に見つかる事は無い。
…教師には。
(いてっ。)
断続的にシャーペンの芯が飛んでくる。そのせいでうなじや後頭部がちくちくし始めた。
まあ、犯人は解っているのだが。
(…あのアマ…。俺が寝てたって関係ねえだろうが…)
俺の右斜め後ろの席の女だ。
今日の朝も俺に纏わりついて来て、結局一緒に登校する羽目になった。
(市川ァ…。一回折檻してやろうか?あ?)
心の中で悪態を吐く。
だが、当の本人である市川春美がそんな感情に気付いている訳も無く、
俺が根負けして頭を上げるまでの数分間、シャーペンの芯は俺に着弾し続けた。
「ふぁぁぁぁ…。終わったあ…。」
俺は帰る準備をしながら、この後の予定を考える。
俺は部活には入っていない。特にやりたい部活が無いのも理由の一つだが、
(『穏健中立派』の仕事があるかも知れねえのに、部活なんて根本的に
無理に決まってるだろうがよ…。)
いつどんな指令が下るか解らないこの仕事に、自由時間など有って無いような物だ。
(取り敢えずこの後は夕飯の献立考えて、姉貴に飯食わせて、洗濯物を…)
「恭一!バスケ部入る気になった!?」
…何なんだこの女は。
声のした方を嫌々向くと、期待に満ちた目で俺を見る女がいた。
無論、市川春美だ。
「…前も言っただろ、入る気ねえし。
そもそも今更入ったってロクに練習行けねえよ。俺は忙しいんだから。」
「…やっぱ駄目?」
「駄目。多分ずっとな。諦めろ。」
市川の残念そうな顔を視界から意図的に排除する。
意味も無く罪悪感を持たされる筋合いは無いのだから。
俺の帰宅ルートは決まっている。
ずっと変わらない、たった一つ確かな要素だ。
(帰り道が不変ってのも、どうかと思うけどな…。)
帰路が不変な理由自体も、大した事ではない。
ビジネススーツと革靴に、唯一の特徴である赤いネクタイを身に付けた男がいるかどうか、それを確かめる、ただそれだけが理由だ。
「仕事だ。資料はこの中に。」
また、仕事がやって来た。