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Re: 影は今日も光に消え入る ( No.2 )
日時: 2011/10/21 13:49
名前: 山 ◆LBa8JREPiQ (ID: nWEjYf1F)

「今日は昨日も言ったとおり、このクラスに転校生が来る……っていうよりもう来てるから、お前らに紹介するぞ。入ってこい、吉田」
 中倉がお得意のドヤ顔でそう言い終えると同時に、教室の扉が勢い良く開いた。そして中に入ってきたのは——
「……おー、男の娘だー。ちょっと可愛いカモー」
 島村はそう言って、キャッキャッと手を叩いた。男の娘というのが何なのかは知らないが、教室に入ってきたのは、男とも女とも言える中性的な顔立ちをした子だった。
「男の子かな」
と東雲。こいつは極度の男好きだ。しかし、男だろうと男の娘だろうと、正直わたしはあまり興味が無い。友達なんて島村と東雲で十分足りる。
 すると、吉田と呼ばれた転校生が、ふいに口を開いた。
「あのー」
たった一言で、騒々しかった教室が一瞬にして静まり返る。
「自己紹介、してもよろしいでしょうか」
そう言って、にこりと笑った吉田は、チョークを手に掴んで、黒板に何かを書き始めた。

吉……田……夜……須。

 どうやら、自分の名前を書いてくれているらしかった。しかも、ご丁寧にフリガナまで添えて。
「僕の名前は、吉田夜須。よしだ、やすです。引っ越してきたばかりで分からないことも多いですが、よかったら手を貸してください。宜しくお願いします」
良く通る、透き通った声で、吉田夜須は言った。声まで中性的な奴だった。
 教室に、吉田への拍手が溢れた。

「名前が『やす』……ってことは男だわね!」
 そう言って目を輝かせる東雲。転校生が男だから何だってんだ。
「えー、シノちゃん、男の娘説はガン無視? それにもしかしたら、ヤスって名前の女の子かもしれないじゃない」
 島村も島村で、またわけのわからないことを言い出している。これだから、こいつらの友達をやるのは大変だ。
「ねぇねぇ、トモちゃんはどう思う!?」
「自分で本人に聞け」
もっともらしいことを言い放って、わたしは机に突っ伏した。昨日は溜まった課題片付けるのに忙しくてあまり寝ていない。
「ちぇ、トモちゃんってばつまんない女ダナー」
「もー、トモちゃんなんか放っておいて、ウチらは仲良く連れションいこっかー」
「そうダネー」
 そう言うと、二人はトイレに走って行った。高校三年生にもなって連れションするなんて、わたしには意味がよく分からない。