ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 影は今日も光に消え入る ( No.4 )
- 日時: 2011/10/15 20:36
- 名前: 山 ◆LBa8JREPiQ (ID: nWEjYf1F)
「連れションって何ですか? 食べ物ですか?」
いつの間にかわたしの横に立っていた転校生が尋ねた。こいつはデフォルトで敬語を使うキャラらしい。もしかするとお坊ちゃんだろうか。
「えーっと、『連れ小便』の略。皆で一緒にトイレへ行くこと」
一応教えてあげておく。坊ちゃんなら『連れション』を知らなくても、ただの世間知らずの金持ちと認識すれば違和感は無い。
わたしの言葉を聞いて、吉田は妙に納得したような表情になったが、その後また怪訝な顔をした。
「そうなんですか。わざわざ説明ありがとうございます。あの、一緒にお手洗いに行くことを『連れ小便』と言うのでしたら、どうしてあなたはあの方達とご一緒に行かれないのですか?」
「面倒だからだよ」
即答した。
「……面倒、ですか? え、だって、お友達なんでしょう?」
吉田は眉をひそめた。
「吉田くんみたいな子には、たぶん説明しても分からないと思うな」
そう言って、わたしは再び机に突っ伏した。
何にも知らない転校生に……金持ちの坊ちゃんに、わたしの気持ちが知られてたまるか。
「あ、え、えっと、ごめんなさい。あなたを不快にするような質問をしてしまったようで……」
「いいよ別に。そんなかしこまって謝らなくても」
慌てる吉田と冷めてるわたし。なんか……なんだかなぁ、不自然。
間が、きまずい。
ふと、突然、吉田が口を開いた。
「僕、一度でいいから連れ小便してみたいです」
「……は?」
「僕今まで、一緒にお手洗いに行く友達なんていなかったので……誘われておいてそれを断ることのできる、贅沢なあなたが羨ましいです」
それはわたしを皮肉っているのだろうか。金持ちに『贅沢』と皮肉られることなんて、わたしの人生でこれが最初で最後なのではないだろうか。(まだ金持ちと決まったわけでは無いが。)
吉田をチラリと見る。こちらに向かう羨望の眼差し。ひぇ、なんだか気持ち悪いな。
(保留します)
