ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: クロア・D ( No.10 )
日時: 2011/09/27 20:53
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: cX1qhkgn)

 「我々幹部は全員賛同致しまして、社長に掛け合ったところ社長は視察の後考えると申しております」

 クロアに報告書を渡した男が、政府の重鎮相手に説明を続けている。
 クレイクロアの研究は、一国家の成果を大きく凌駕したものが多い。 生命エネルギーの存在の証明や、その有効活用方。 更には、無能力者における能力の発現手術など、その分野はさまざまで、その全てにおいて現国家の研究の域を大きく超えている。
 それも、大国セフィロトの軍事科学を持ってしても敵わない高度なテクノロジーを有した上で技術を持っている。
 セフィロトからすれば、自分の中に出来た自分以上の力を持った軍隊を相手にしているようなものだ。 できれば、自分の手中に収めておきたい。

 「そうか、確かにそうだな。 我々からの一方的な併合提案だ。 そちらにも知る権利はある」

 一人、椅子に腰掛けていた髭の男が静かに言う。

 「そう、良かった。 断られたらどうしようかと思ったよ」

 男の言葉の直後、その部屋の大きな扉が開く。
 部屋に入ってきたのはやはり彼。 鞄を片手に抱えた、クロア・ディナイアルである。
 だが、彼は政府に自分の頭文字以外、全てを伏せている。 つまり、彼のここでの呼び名は、

 「C・D社長。 お聞きになられたかも知れませんが、視察の許可が下りたところです」

 そう。頭文字をとってC・D。 
 クロアはポケットをあさると大きなチョコレートの袋を破き、一センチ各程度の大きさのチョコレートを口の中へと放り込む。

 「ああ、聞いていたよ。 それで、そうだな。 貴方達の使用を拝見した結果、一つ気になるものを見つけまして……」

 クロアは持ってきた鞄をあさると一枚のレポートを提示。
 そこには「A・P」と記されている。

 「今一わけが分からないこの研究……これの説明と、併合の後にこちらへ一任する許可を頂きたい」

 全て暗号化された、他とは明らかに違うレポート。

 「アリエッティ・プロジェクトの説明か。 余興程度のものだが、それをどうするのだね? ま、君の発想も中々面白いものが多い。 説明するとしよう」

 髭の男は席から立つと、クロアに一枚の写真を手渡した。
 赤毛の、女の子が写っている。 大体、そうだな。 10代前半か、後半か……。 そんなところだろう。
 ただ、違和感が一つ。 背景にあるものが、異様に大きいのだ。 フラスコや、試験管などといった実験器具を背後に撮影したのだろう。 彼女が小さいのか、器具が大きいのか。 その二択で、人口人類を作る研究と、もう一つ。

 「小人を作る研究……それがプロジェクトAだ」

 そう、小人を作る研究か。 

 「なるほど床下の小人……童話でありましたね。 床下……ということは、そういった使い方をする偵察か何かですか?」

 「いいや、それほどまでに高い身体能力は持ちえていない。 ゆえに、君の会社に研究を一任する許可を出す事も容易だ。 ただ、口外不出、他言無用だ。 身体強化薬で既にある程度の実績は出している」

 ……進退強化薬、ねえ。 催眠薬の間違いじゃないか?
 作られた歪な生き物が、そんな簡単に研究者の言う事なんて聞くわけが無い。 ボクだって、そのうちの一つだ。
 現に、こうやって策を張り巡らせている。

 「分かりました、詳しい説明をお願いします」

Re: クロア・D ( No.11 )
日時: 2011/10/01 17:22
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: cX1qhkgn)

 「これが小人ですか、中々……可愛らしい」

 クロアが、金属光沢を放つ箱の底に、小さな鎖で繋がれた人間を見下ろしている。 そこに居たのは、5、6人。 だが、この箱のほかに箱が三つある。
 中に座っている人間は全員、何を見ているわけでもなく……ただ、そこに居た。
 どうも、相当扱いが酷かったらしい。 見たところ、既に廃人寸前だ。 今ここで殺してやったほうが、こいつらのためになるのではないかと思えるほど。

 「じゃ、この研究施設の結果の写しと……小人達を貰い受けます。 研究資料にするに当たり、最低でも40人は欲しいところですが……何とかします」

 クロアの言葉に、研究室を任されていた二人の研究員は口をあんぐりと開けて驚いたような表情で彼の顔を見ている。
 それに対し、クロアは一枚の書類を取り出すと、研究員達に提示した。

 「アリエッティ・プロジェクトの全てを、こちらに一任する許可を貰っています。 なので、貴方達も輪あれ我の施設で働く事となりますが、よろしいですか?」

 「な……どういうことだ? 話がよく……」

 「どうもこうも、言葉通り。 ただ……断っていただいて構いません。 いや、訂正しよう」

 クロアの後ろから、熊のような巨体が顔をのぞかせた。 それを見た途端、研究員たちの顔が一気に青くなるのが見て取れる。

 「ら……ラージタスク!」

 「断ってくれた方が、ボクとしてもありがたい」

 クロアの言葉の後、クロアの背後に控えていたそれは二人の研究員に触手を伸ばし、絡め獲った直後。 目にも留まらぬ速さで、二人をその巨大な口の中へと引き釣り込む!

 「さて、早速搬送時に不慮の事故で研究員の二人が死亡。 死亡時刻は……そうだな」

 クロアは時計に目をやった。 針は、午前11時を指している。

 「午後三時十六分。 クレイクロア研究室内で死亡……で、良いかな」

 クロアは報告書にそれを書き綴ると、背後に居たモンスターに触れると、モンスターは死んだように動きを止めた。

 「シグマ、このデカイ化け物を頼むよ。 ボクは小人を、ボクの部屋に運ぶから」