ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: クロア・D ( No.7 )
日時: 2011/09/26 19:41
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: cX1qhkgn)

 暗黒町から、三年。 彼、クロア・ディナイアルはとあるビルの屋上に寝転んでいた。
 本日の天気は晴天、曇りの無い青空が一日続くでしょう。
 そんな天気予報を否定するかのように、彼が起き上がりビルの中に戻った直後。 一滴の水滴が屋上のコンクリートに落ちた。
 それと同時、太陽は雲に隠され、雷が街路樹に落ちた。 それを合図にしたかのように、無数の水滴がビルを中心にあたり一面を水溜りに変える。

 「本日の天気、晴れのち雷雨。 気分の問題で晴らしてたけど、干ばつ続きも良くないだろうし」

 ビルの最上階。 ガラス張りの部屋で、肘掛け椅子に彼は腰掛小さく呟いた。
 ワンフロアぶち抜きの、机と椅子以外何も無い殺風景な部屋。 机の上には書類やパソコンと言った仕事道具など一切無く、飴やチョコレートと言った菓子がその大部分を陣取っていた。
 それに彼は手を伸ばし、口に運んだ。

 「失礼します」

 その直後、扉が開き一人の男が彼の前に出ると、男は書類を彼に手渡し口を開いた。
 書類には、政府機関との合併に関する提案書と記されている。

 「このたび、我々クレイクロアメンバーの研究成果を、政府が嗅ぎ付けまして。 設備を視察の後、合併を申し出ておりますが……如何なさいましょうか?」

 男の問い。 それは、今まで3年間待ち続けた政府からの接触。
 表向きは、ただの製菓店であり、その規模は国内の総生産の7割を占めていた。
 金は有り余っている。 そして、その金は全て別のところへ回されていた。 そう、能力者の研究である。
 能力者という生き物は、何故特殊能力を扱えるのかと言う観点に視点を置いての研究。 そして、その結論は思いのほか簡単に算出された。
 DNAに、魔力なるエネルギーを与え、発動する力であり、その魔力は生き物にとっては毒であり、それを蓄積しやすい人間が、魔力を放出する際に生じさせる能力。
 それが、研究の結果であり、彼の会社が政府機関に目を留められた理由の一つだった。
 ただ、研究施設など以外にも莫大な金という観点からの合併提案も大きいだろう。

 「そうだな……承諾の返事を出しておいてよ。 能力者の力の仕組みを記したレポートも、向こうに渡して構わない。 ただ、本文書ではなく、来客用の文書だよ。 それらしい事しか、それには書いた覚えが無いからさ」

 そう、全てはこの日のために。 彼の策。
 政府を転覆させ、無力化すると同時。 その全てを己の手の上におこうとする、彼の野望は……ついに動き出したのだ。

 「あ、そうだ。 向こうの資料の提示と、視察を条件に入れるよう言っておいてよ。 その方が、無条件で受け入れるより不自然が少なくてすむからさ」

 口元が、笑っている。 そうだ、予想通りの展開。 それも、思った以上に早く政府の研究機関は彼の垂らした餌に食いついたのだから。