ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【なんか一章終了した】 ( No.14 )
- 日時: 2011/09/30 20:56
- 名前: No315 (ID: vBUPhhME)
俺は呆けた声を上げながら、そのまま集中する。すると遠くからズシーン、ズシーン、とまるで、アニメなどで出てくる巨大な化物が出る前兆のような音が聞こえる。
だんだんその音は大きくなり、もう集中しなくても聞こえるほど大きくなっていた。
俺はこの時点でなにか『嫌な感じ』を感じていた。いままではカーレルが言っていた『危険な世界』と言う言葉を裏切るように笑顔で溢れる人達でいっぱいな平和な世界が出来上がっていた。しかし今は平和な世界と思えるような要素、すなわち人がいない。
つまり、今は全く平和な世界などではないと言うことだ。
そして、俺がそこまで結論を出したとほぼ同時に、『ソレ』は現れた。
三メートルほどはあるだろう巨体に灰色に光る体。狐のような顔。そして、体色よりも鋭くギラギラとした長い爪。明らかに化物と言っていいような姿だろう。
俺はそれを見た時、うわぁ、と引きつった。化物はそんな俺のことを意にかさず、ゆっくりとこちらにせまってくる。俺はた試しに化物の狐顔にある、赤く光る目を見る。その瞳は当然、俺を凝視している。
なるほど、俺、餌として狙われてる。
「たぁぁぁぁぁすけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
俺、全力疾走。
俺がくるりと化物に背を向け、走り出すと同時に、化物もいままでのゆっくりとした歩みから打って変わってものすごいスピードで走りだし、俺=餌を追いかける。
当然俺は足の速さには自信があるのだが、三メートルほどの巨体の歩幅は半端ではない。
俺の予想通り、化物はいとも簡単に俺に追いつき、手を伸ばしてくる。
「こういう事だったらさっさと言えよあのクソピエロォォォォォオォォォ!!」
俺は今もどこかをほつき歩いてるだろうピエロのことを罵りながら、鬼気迫る勢いで走る。
そして、今にも化物の手が届きそうな距離になったその刹那。
どこからか轟音、いや銃声が聞こえた。
と思った時には、俺をつかもうとしていた化物の手になにかが深く刺さり、肉を抉る。
化物はあまりもの激痛に走るのを止め、もがいている。
と、いきなり、なにかが刺さっていた化物の腕が爆発した。爆発の威力は物凄いもので、化物の片腕は跡形もなく無くなっている。
「徹甲榴弾……」
俺は激痛にもがく化物をぼんやりと見つめながら、今の弾の名前を呟いた。
たしか、太い針などの中に火薬を詰め込み、敵に食い込む弾を用意し、発射すると火薬が詰まった弾が敵へと突き刺さり、数秒後にその火薬が爆発するという弾種だ。
もっとも、銃に詳しいわけではないので、どうして火薬が爆発するかはしらないが。
「たく、まためんどいのがいるぜ」
不意に後ろから声がした、振り向くと、銃口から煙を吐き出している赤い装飾が施された大型の銃を片手に構え、赤いトレンチコートを羽織った赤髪の男がそこにいた。
俺がその男をまじまじと見つめていると、後ろから化物の怒りのような咆哮が聞こえた。
振り向くと、化物は完全に標的を男に変えており、俺のことを素通りして男の元に走る。
そして、なくなってないもう片方の腕を振り上げ、鋭い爪で男を串刺しにしようとする。
男は、そのまま動かず、大型の銃を盾にする。普通あんな物で巨大な爪の攻撃を防げるはずが無い。だが男は銃でまともに攻撃を受けることはせず、ただ、火花を散らしながら、爪の軌道をわずかにずらす。爪は男に一本も当たらず、大振りの攻撃をかわされた怪物は一瞬動きが止まってしまう。その隙をついて男は銃をすばやく構え、轟音とともに化物の顔に弾丸が炸裂する。そして、腕を破壊したように数秒後、化物の顔が爆発し、断末魔の叫び声を上げる暇もなく、化物は無数のポリゴンと化して消えていった。
「た、助かった……」
その一部始終を見ていた俺は、とりあえず危険が去ったことを悟り、安堵の息を漏らす。
男の方を見ると、銃はどこかに消えており、ただそこに突っ立っている。
俺はとりあえずお礼を言おうと男に近づく。男は俺が近寄って来るのに気づくと、なんだか面倒くさそうに頭を掻き、いつのまにか現れた銃を俺に向けた。
「いっ!?」
俺は驚きながら、咄嗟に銃口の射線上から離脱する。それが幸いだったようで、さっきまで俺がいた所を徹甲榴弾ではないが、無数の弾丸が貫く。
「た、タンマー!ストップ!射撃中止!」
俺は叫ぶが、男は全く無視し、俺に向けて弾丸を飛ばしまくってくる。
「だから……」
俺は、弾丸をなんとか避けながら、そこらへんの石を二つ拾い、一つ、そして時間差でもう一つを投げる。男は迫ってくる石を正確に捉え、二つの石を撃ち落とした。
だが俺はもう男の目の前まで来ていた。
「はぁ!?」
男は素っ頓狂な声を上げながら、俺に銃口を向けるが、
「……待てって言ってるだろうが!」
俺の拳が男に届くほうが速く、男は殴り飛ばされ、少し離れた所でドゥ、と倒れた。
やがて、ムクリと起き上がり、俺のことを睨み付ける。
そんなに痛かったかな、と思い、俺はなんと声を掛けようかと考えを巡らせていたが、そんな俺に対して、男は緊迫した声で、言う。
「どうした、早く殺せよ」
「へ?」
俺はその言葉に呆けた声を出してしまい、しばし硬直する。男は俺のそんな様子を不思議に思ったのか、まじまじと俺を見つめ、やがて何か思いあたったようにあぁ、と声を上げ、立ち上がる。
「……ひょっとして、お前って初心者?」
男のその言葉に俺はぴくり、と反応し、この人なら何か知っているのかと思い、とりあえず返事をする。
「あぁ、初心者っていうのか分からないけど、なんかこんな所に飛ばされてなにがなんだか……」
俺のその言葉に男はふむふむ、と頷く。
「俺の名は勝井正影(かついまさかげ)。あんたは?」
「……篠崎紅架」
さっきまで思いっきり銃で撃ってきたくせに、何いまさら仲良しみたいに名前教えあってんだよ。
そんな俺の心境を知ってか知らずか、正影は薄く笑いながら、くるりと背を向け、俺に向かって言う。
「ついてきな。この世界のこともまったく知らないんだろ?ある程度は教えてやる」
そういいながら、正影はそのまま歩き出す、俺はやっと信頼できそうな奴を見つけたと、心の中で喜びながら、正影の後を追った。