ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【いまんとこ二章目だよー】 ( No.16 )
- 日時: 2011/10/01 22:58
- 名前: No315 (ID: vBUPhhME)
俺は正影の言葉にしばし呆然とする。ゆっくりその言葉を噛み締めるが、それでも出てきた結論は生易しいものだった。
「それって、死んだら現実に帰るっての?」
「そんなのだったら俺はここにいない。とっくに自殺して現実に帰ってる」
俺のやっと出した結論を、正影はきっぱりと否定する。
「んじゃあ、死んだら現実に戻れずに、そしてゲームにも復帰できない?」
「いや、それはそれで最悪だが、死んだ人々を保護する必要と処理ソフトはどこにあるんだ?」
「……じゃあなんなんだ?」
ことごとく意見を否定されて、俺は自分で考えるのが面倒くさくなり、正影に答えを求める。正影は少々間を取りながらもその答えを口にする。
「……死ぬんだよ」
「え?」
「……だから、ゲーム内で死んだ奴らはみんな現実でも死ぬんだ」
「……マジ?」
俺はしばし、愕然としていた。ゲーム内での死は現実の死。俺は無意識にその様子を想像してしまう。
今まで必死に戦ってきたプレイヤーの姿を何者かがどこかで監視していき、そのプレイヤーが死んだ瞬間、現実でのプレイヤーの体の生命活動をなんのためらいもなく停止させる非情な姿。
正直、吐き気がした。自分だけ安全なところで、俺達を見せ物として見物し、使えなくなったらすぐさま捨てる、そんな奴らに憎悪を抱いた。
だがそんな事をしたところで今の状況が変わるわけでもない。俺は正影に悟られないように、ゆっくりと怒りを静めていく。
「ま、俺も他人に聞いただけだから半信半疑だな。でも、死に関わる実験なんてしたくもないしな。それに、死んで現実に帰るなら、そいつらがすぐさま訴えるだろうし」
正影は自分の仮説をペラペラと喋る。俺はその言葉で少し落ち着き、少々気になったことがあるので、聞いてみた。
「そういえば、俺はいまのところ、そのプレイヤーはお前しか見たことないけど、そんなにいるのか?そのプレイヤーは」
「あぁ、たぶん最初の頃と減ってないだろうな。だって、ここで死ぬやつもいれば、現実からやってくるやつもいるしな。意外とNPCに混じって普通に暮らしてんだぞ」
「NPC?あぁあのプレイヤー以外の人間のことか」
俺は納得する。たしかにあんなあまりにも普通な暮らしに混ざることなど簡単なことだ。
日々、プレイヤー達は、どこかで暮らし、戦ってる。
「まぁいい。んで、どうやってその怪を倒すんだ?っていうか、お前あの銃どっから仕入れてきた?銃刀法違反というものを知らないのか?」
俺の言葉に正影はあぁ、と言い、右手を出す。まずそこにはなにもないが、正影が手を銃を持った時のような形にすると、そこに高速で光が収束し、大型の銃が現れた。
「あぁこれはな。製作者が怪に対抗できるように作りあげたものでな。人気のない路地裏とかに俺達しか見えない店があって、そこで売ってる。普通に日本円で大丈夫だ。」
俺はそんなことかと、正影の話を聞いていたのだが、不意に自分にお金があるのか気になり、ポケットを探る。
うん、ない。
「おーい、正影くーん。お金がありません」
「え?まじか?……まぁ普通に生活してりゃバイトして稼げるし、怪と戦うなら自然にたまるだろうし、一応武器だけ渡しとくか」
そう言うと正影は立ち上がり、奥にある木箱のようなものをあさり始めた。
あっけなく武器とか渡すんだなぁ。
っていうか何?怪と戦うなら自然に貯まるって、経験値みたいにバトル後に貰えるの?
「いいのか、武器って高いんじゃないのか?」
「ダイジョブダイジョブー。どうせ俺はこの銃一丁しか使わないし。ほら、持ってみろ」
そういって正影がとりだしたのは、赤色に染められた太い金属の塊。よく見ると何かを通す穴があり、それが腕にぴったりはまるのでおそらくガンドレッドのようなものだろう。それが二つ。
さらに出てきたのは。一目で靴と分かるような形をした、またもや赤く染められた金属の塊。それも二つ。おそらく両足、両腕につける物だろう。
「なんだこれ?」
「まぁまぁ持ってみろって」
そう言われてとりあえず両足、両腕、あわせて四つの武器を両手に抱える。
ん?少し軽い?
「そんで、その武器に意識を集中しろ」
俺は正影に言われた通りにその武具を凝視して、集中する。
すると、いままで両手に抱えていた武具が光を散らして消えた。
「は?消えたぞ?」
「まぁまぁ。んで、次はその武器のことを強く感じてみろ」
「感じるか……」
いわれるがままにいままで手元にあった武具のことを頭に思い浮かべる。
どちらも赤く染められていて、それはまるで全てを焼き尽くす紅蓮の炎のようだ。
俺はその姿を思い浮かべながら、咄嗟に呟いた。
「……来い」
それと同時に俺の両腕と両足を光が包みこむ。そして光がそれぞれの形をとると、今度は勢いよく燃え出した。
その炎は俺を燃やしてるはずなのだがまったく熱くもないし、火傷をしている様子も無い。
やがて、炎は収まり、そこに現れたのはいままで手元にあった赤い武具達がそれぞれの部分に装着されており、それだけでなく、いままではなかったはずなのに、全ての武具に、刃が装着されている。
「それがこれからのお前の武器。『イフリート・フレイム』だ」
「『イフリート・フレイム』……」
正影が呼んだその武器の名。俺はその名前を噛み締めながら、これから共に戦い抜く相棒をまじまじと見つめた。
不意に、肩にポンと手を置かれた。振り返ると正影はなにかを思い出すように虚空を見つめ、ある思い出を語った。
「お前はこれから、この狂った人生ゲームの道を歩むことになる。昔はお前みたいなのが何人かいてな、俺はそいつらに向かって決まってこう言ったんだ」
「ようこそ。狂った狂った人生ゲームへ、ってな」
これからどうなるのか、この世界の仕組みもだいたいのことしか分かっていない俺には見当もつかない。だが、俺はどんな困難があろうともこの戦いを生き抜き、現実に帰ることを俺は心に誓った。
二章終了