ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 人生ゲームはデスゲーム ( No.2 )
日時: 2011/09/23 15:10
名前: No315 (ID: vBUPhhME)

 奏神町 奏神公園前

俺達は今、夕方になってもまだ公園で親と一緒に無邪気に遊ぶ子供達を見ながら、下校している。

「賑やかだよなぁ」

そういってきたのは子供達を微笑ましく見つめている翔。

「ん?翔って子供好きだっけ?」

俺は見つめているというより、見守るに等しい視線を子供に向けている翔に疑問を覚え、聞いてみる。
翔は俺のその質問に笑いながら応答する。

「いや、別に好きってわけじゃないけど、なんか、あんな賑やかになること高校に行ったら文化祭とか体育祭とかじゃないとあんな風にならないだろ?だから毎日賑やかに暮らしてるあいつらを見ると、羨ましく思うんだ」

ふむ……なるほど。

「つまり、子供相手に嫉妬してんのか」

「……紅架君、あとで大事な話があるので職員室に来なさい」

「わー。図星だからって逆ギレですかー先生ぇー」


二分後……

「どうもすみませんでした……」

今、俺がズタボロになっているのは言うまでもない。
後々、俺と翔は軽口を叩き合いながら公園を後にする。
そこで、公園を少し越えたところの十字路で何かが紅架にぶつかった。

「ん?」

見るとそこにはサッカーボールがあり、とりあえず紅架はそれを拾い上げる。
そのサッカーボールを観察していると後ろから、おそらく公園にいたと思われる子供が駆け寄ってきた。

「おにぃちゃん、ごめんなさい」

その男の子の第一発言に俺はなんでいきなり謝るのだろう、と数秒ポカーンとしていたが、すぐにボールが当たったことだと判断し、笑顔で答えながらボールを渡す。

「いいよ、大丈夫さ。これ、君のだろ。ほい」

ボールを受け取った男の子は、ぱっと花が咲いたような笑顔になり、ありがとう、といいながら走っていった。

「なんだよ、紅架も案外子供好きじゃないかよ」

「別に、他人の物を返すのはあたりまえだろ」

俺と翔はまた軽口を叩き合いながら、その子供を見送っていたのだが、
ふと、どこからか車の……おそらく電気自動車のタイヤの音が聞こえた。
その音源をたどるとどうやらこの先の十字路の曲がり角からだろう、おそらくこちらに向かっている。

「ん?」

そこで、俺は走る男の子を見る。男の子が走っていく方向は紛れもなく十字路の方向。
俺は雷光の速さで十字路の周りを確認するが、どこにも人や曲がり角を写すミラーもない。
そして、こっちに向かって来る車は、エンジン音のない、電気自動車。

「っ、おい!危ないぞ!止まれ!」

俺は男の子に向かって叫ぶが聞こえていないらしく、走る勢いは止まらない。
このままだとあの男の子の命が危ない。

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ、クソ!」

俺は男の子を追いかけ、猛然とダッシュする。部活に入らず、体力は落ちたが、足の速さはサッカー部にいた頃とそんなに変わっていない。

「あ、おい紅架!」

翔が後ろから声を掛けてくるがもうかまっていられない。
今ならまだ間に合うかもしれない。
俺は祈るような気持ちで走り、男の子との距離を縮める。
男の子が十字路の真ん中まで走ると、まだ見えないが電気自動車のクラッションが鳴り響く。男の子はその音に驚き、足を止める。
もう少し……もう少しで……!
俺は無我夢中になって走り、男の子の所まで追いつくと、男の子を突き飛ばした。
この後に起こる惨劇を、俺はゆっくりとした世界で見つめていた。
クラッションを鳴らしながらこちらに向かってくる車、ゆっくりと顔を上げ、運転席を見ると驚愕の表情をした運転手と一瞬目が合ったような気がした。
そして車が俺の体に当たり……
派手な音を立てながら車は俺を難なく突き飛ばし、俺は気を失った。