ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【ただいま三章目】 ( No.23 )
- 日時: 2011/10/25 21:07
- 名前: No315 (ID: vBUPhhME)
六月八日 埼玉県 奏神高校 第二教棟三階 2—E教室内
翌日、翔が交通事故で亡くなったことはもうほぼ学級内に広まっており、朝から騒然とした雰囲気であった。それぞれ、
「ねぇ聞いた?昨日、内のクラスの篠崎君。亡くなったんだって」
「あ、聞いた。交通事故らしいね」
「へ〜。俺は初耳だな」
「あいつ、二年になった時は結構学校に馴染んでたのにな……」
などと皆好き勝手に紅架の話題を出しまくっていたり、紅架と仲良くしていた生徒の所に励ましに行ったり、中には職員室にまで押しかけ、詳細を求めに行った生徒までいる。翔はそれを眺めながら、ゆっくりと昨日の応接室での会話を思い出す。
『篠崎紅架はちゃんと死んだか?』
『あれはもう治しようがありませんでしたよ。見ただけで物凄くひどかったし』
『俺達が狙ってるのは、死にそうな患者だからな』
あの病院がなにを企んでいようが、翔には関係ない。むしろ、関わらないほうが懸命というものだろう。
だけど、もし、あいつらのせいで紅架がまだ苦しんでいるのなら、俺は……
「ほらほら、席に着きなさい。授業が始まりますよ」
教室に突然入ってきた担任の言葉に翔の思考はそこで停止される。教師の言葉に他の生徒たちも反応し、それと同時に多数の質問と反論が教師に降りかかる。
「先生! 篠崎君はどうして亡くなったのですか!?」
「事故に遭っただけなのにどうして死ぬんですか!?」
「クラスメートが亡くなったと言うのにどうして落ち着かなきゃいけないんですか!」
「交通事故で亡くなったくらいしか教えられてないのに、納得いきません!」
「だいたい篠崎の奴は運動神経もいいし、交通マナーはちゃんと守る奴なのに交通事故っておかしくないですか!?」
「分かった分かった! とりあえず落ち着きなさい!」
担任はその言葉の嵐に対応しきれずただ「分かった!」と叫びまわる状態だ。翔はその様子をただじっくりと眺めながら、授業にならない授業を受けるのであった。
雨原家
俺はなにを考えているのだろう。死んだ紅架がまだ苦しんでいるなんて、とても馬鹿馬鹿しい妄想だ。
翔は心の中で呟きながら、自分の部屋の中に入り、学校の鞄をそこらへんに放り投げ、壁に背を預け、ずるずると座る。制服から着替えることはせず、ただ動かずに天井をなんの意味もなく見上げる。
どうして、あんなことを考えてしまったのだろう。確かに、あの病院が紅架に何かしたのは分かるのだが、なにもしなくても死ぬのは、もう翔が確信していたことだ。ふと思い出すとデータがなんだか言ってたからなにかのサンプルに扱われたのかもしれない。それでも紅架が死んだことには変わりは無い。結局、最終的には、あれは知っていても知らなくても、翔になんの影響の無いことなのだ。気にする必要などない。
しかし、なぜか、あの事を気にしてしまう、なぜか嫌悪感を抱いてしまう。翔には関係のないことなのに。
もういい。さっさと寝て忘れよう。
翔がゆっくりと体を持ち上げ、そのまま、ベッドに乗り込もうとしたのだが、不意にズボンのポケットから、携帯のメールの受信音が鳴り出した。
携帯を取り出し、送信者を確認すると、だいぶなつかしい名前が載っていた。
そして、翔はその内容を読み……
六月十日 東京 寄永
学校が休日のこの土曜日。翔は朝から埼玉を出て、元は品川と呼ばれたこの町に足を踏み入れた。ほとんど人と建物しか見えない町の中で翔は、昨日のメールをもう一度確認し、その人物に会いに行くのであった。
翔の下に送られた一通のメール
『よっ、ひさしぶりだな、こういう時はなんかちゃんとしたあいさつとかするべきなんだろうけど、俺、そんなの知らないし面倒だから省くぞ。
ニュースを見た。お前の親友の篠崎とかいう奴が亡くなったんだってな。本当ならここで慰めとかご愁傷様ですとかすると思うけど、それどころじゃないし面倒だから省く。んで、本題だが、お前、篠崎が亡くなった病院、覚えてるか? あそこは西新宿総合病院っていう所なんだけどな、あそこで篠崎は治療を受けたんだろう? なら、篠崎は死んだんじゃない。殺されたんだ。後の結果が同じでもな。お前も、あの病院に行って、なにかおかしいと思わなかったか? ま、あいつら思いっきり隠してるから運がよくないとまず無理か。
篠崎は病院の奴らに殺され、恐らく死んだ今でも苦しめられてる。意味が分からないか?まぁ普通はそうだろうな。でも事実だし。とりあえず、今、苦しめられてる篠崎を救いたいって言うなら、今週の土曜、寄永の北広場に来い。協力してやる。んじゃまた。 送信者 桜木 蒼(さくらぎ そう)』
三章終了