ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【三章目が終了しやした】 ( No.24 )
- 日時: 2011/11/12 10:23
- 名前: No315 (ID: vBUPhhME)
第四章「プレイヤーと日常 Everyday Battle」
ハイドタウン。
隠れ街という名を持つその街は大きく大商業区、民間区、農業区の三つの区に分けられ、大商業区と呼ばれる商人や客で賑う場所を中心に皆、豊かに暮らしていると言う設定で作られているそうだ。
なぜ、そんな豊かな街に『隠れ』なんて名前が入っているのかは知らないが、この町で暮らしている偽りの魂を持つ人々—NPCは設定通り、毎日豊かに暮らしている。
そんな街の中で、NPCとは違う存在の、四つの影が、NPCが一人として存在しない謎の空間を疾走していた。
「はぁ……はぁ……」
影の中の一人はショートヘアの少女。荒い息を漏らしながら他の三つの影から逃れようと懸命に走っている。そんな少女の背後からはいくつかの声と銃声。
「ほらほらぁ! おとなしくしたらぁ?」
「こっちはさっさと終わらせたいんだけどなぁ」
「くそ、逃げ足が速い奴だな!」
そんな声を少女は完全無視して、巧みに向こうの銃の射線上から逃れつつ、逃げる。
自分が本気を出せば、あの三人を無力化することができる。そのことはずっと前から分かっていることだが、それが何を意味するかも理解しているため、逃げるしか手段がない。
しかし、そうしている内に、向こうはだんだん距離を詰めてきている。
そして、向こうの放った弾丸が、ついに少女の左肩の表面を深く抉った。
「ぐっ!?」
少女はあまりの痛さに絶叫する所だったが、なんとか堪え、そのまま怯むことなく走り続ける。
銃声は絶え間なく響いてくる。これなら騒ぎを聞きつけたプレイヤーにいつ追われることになるか分からない。
しかたなく少女は自分の武器を音も無く具現化させ、そのとある能力を最大発揮する。
——『幻想舞踏』——
いままでの少女の逃走スピードが、信じられないほど格段にアップし、数秒で三人との距離を開ける。向こうもそれに気づき、すかさず一人が銃を乱射するが当たらない。
やがて、三人の影が見えなくなり、しばらくどこかの通路を走ると、突然視界にいくつものNPCの姿が現れた。
少女はそのことに安堵しながら、たくさんのNPCの邪魔にならないように隅まで移動し、壁にもたれかかりながら息を整える。
「……逃げるしかないのかな……」
少女—桜木優(さくらぎ ゆう)は誰にも聞こえない声で、寂しげに呟いた。
その瞬間。いままでたくさんいたNPCの姿が一瞬で消え去り、辺りに銃声が轟いた。