ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.25 )
日時: 2011/11/15 19:49
名前: No315 (ID: vBUPhhME)

朝 ハイドタウン 民間区 正影の住み着くアパート内

 どっかの誰かさんによってタバコとビール缶のみで荒らされたとあるアパートの一室。俺—篠崎紅架しのざきこうかは愛着している黒のコートを、タバコとビールの回避地点に放り投げ、その部屋の壁にもたれながらただ意味もなく天井を見つめていた。
 本当なら知らぬ間に起きたこの現状に対処すべく、暇があるなら頭をフル回転させて考えを巡らせる状況なのだが、今は十二%信頼でき、四十七%頼れる仲間が一人いるし、朝っぱらから脳を動かすのは学校のテスト前の時ぐらいで充分だ。
 しかし、過去から現在までの現状を理解する必要は三千%中二%くらいあるだろう。
 どうせ暇だし、思い出したりするだけなのでそこまで脳も動かさない。俺は窓に視線を移しながら過去を振り返る。
 俺はとある日。親友と下校している際に、危うく車に衝突しそうだった子供を助け、交通事故に遭った。
 そして俺はどこかの病院へと輸送され、最新鋭型麻酔の『デジタルダイブ』と呼ばれる、患者の五感を別の場所に移すという技術を使い、俺は夢の世界に行くはずだった。
 しかし、そこで待っていたのは、何にも無い密室空間と、上半身だけ生えたカーレルと名乗るピエロだけだった。
 俺はすかさずその場にいたピエロを拷問したり反撃されたりして、なんとか、病院側の作った世界が危険な所だと理解した所で俺はピエロによってその世界に突き落とされた。
 俺が目を覚ますとそこにあったのは、場所は違えどいつもと同じような人々で溢れる、思いっきり平和な世界だった。しかし、その人々が一人もいなくなった瞬間、化物が現れた。本気で入れ替わりみたいだった。そしてそこで逃げ惑っている俺を……

「起きろ」

「起きてる」

 部屋の扉をドゴン! と、蹴り飛ばし、まるで砲弾が打ち込まれた時のような音を響かせながら入室してくる赤髪で三十代前半の男—かつ正影まさかげに助けてもらったのだ。
 はい、正影も来た事だし、回想終了。まだ最後まで回想してないけどいいや、面倒だし。
 俺は、今まで窓に向けていた視線を入り口の前で佇む正影に向ける。正影は俺の顔を見るなりどこか不敵な笑みを浮かべながら、俺にずいずい近づいてくる。

「なんだ起きてんのか。よく眠れたか?」

「だれかさんが撒き散らしたタバコ臭のせいで全く眠れませんでした」

 正影は俺の反応を見てどう判断したのか謎の笑みを浮かべたまま、なら問題ない、と言って、俺に朝食のリンゴ一つを投げ出す。
 朝食がリンゴ一つって……と心の中で呟きながら、俺はリンゴを受け取り、すぐ食べることなく、手の中で弄ぶ。
 別に毒とかを警戒しているわけではなく、ゲームの中で飯は食わないと餓死するのだろうか? と意味のないことをリンゴを見ながら考えていただけである。
 正影は、もう一つのリンゴを齧りながら

「んじゃあ、外出るぞ」

 と、唐突に言い出した。

「どした? ゴミでも捨てに行くのか?」

 俺もリンゴを一齧りし、じわじわと広がる果汁の味をゆっくり味わいながら唐突に何か言い出した赤髪ゴミ溜め魔に対して、平然と言う。

「違う。お前まだあやかしとの戦闘をまともにしたことないだろ。色々教えてやるから外に出ろ」

「なるほど、少し期待」

 俺はもう一度リンゴを齧り、黒のコートを羽織ながら立ち上がる。
 あやかしとは、俺が回想の時に話した怪物のことだ。なんともこのゲームの管理者が作った物らしく、作った奴は相当なファンタジー好きか相当な趣味の持ち主であろう。
 それに対抗できるが俺達プレイヤーのみが扱うことが出来る武器だ。武器以外の名前がないのでおそらく武器だ。
 どうやら、どこかの人気の無い所で売っているらしい。入手方法は、ほぼそれだけなのだが、正影の話によると、怪のボス的存在、またはフラグボスを倒すと三割の確率でレアな武器が手に入るらしい。正影の愛用している銃、『ビスマルク』や正影から貰った俺の『イフリート・フレイム』などもその三割の中から出てきたものだ。
 よくそんな大層なものを俺にほいほい渡してくれたもんだ。本当に銃しか使う気がないのかよ。
 そんなことを考えながら、俺はアパートを後にし、先を行く正影の背を追いかけるのであった。




「よし、とりあえず怪についてなら昨日話したからな、俺達の使う武器について説明しようか」

 そう正影が口を開いたのは、正影のアパートから少し離れた民間区と大商業区の境界くらいの場所だ。
 あたりをよく見ると、左右に警備班らしきNPCがそれぞれ二人ずつ配備されている。
とくに大きな荷物を背負っていない人達は、それを気にすることなくそのまま素通りして行くのだが、なにやら商人らしき人達は警備班に近づいてなにやら確認を取っている。

「あぁ、あれはな、商人達がこれを売りますから許可くださいって感じのところだ。俺は説明苦手だからこれ以上説明できねぇぞ」

 俺の視線を見て取ったのか、正影がすかさず説明した。説明苦手って、昨日あれだけ分かりやすく教えてくれたじゃんか。

「あれは生き抜くのに必要なことだし、昔俺が教えてもらったことをそのまま復唱しただけだからな」

 正影はそう言いながら、歩みを止めず、そのまま歩く。俺も商人達の商品をちらちら見ながら、正影の後を追う。
 なるほど。なんか売ってみるのもいいかもな。