ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.26 )
- 日時: 2011/11/17 20:14
- 名前: No315 (ID: vBUPhhME)
大商業区
「んで、話はずれたが武器について説明するぞ」
さてさて、舞台は変わって大商業区入り口付近。俺と正影はそこで立ち止まり、なにかを売りさばいている商人達と大勢の客達を眺めながら話す。
「武器ってのは、昨日も言った通り怪に対抗するために作られた物だ。んで、その武器にはある能力が宿ってる」
「能力?」
俺は今度はどこかの超能力がでてきたな〜とか考えながら正影に問い返す。正影は薄く笑いながら人差し指をピンと立てる。
「じゃここで問題だ。俺達は怪に対抗するために刀を手に入れました。それであの人の身長の何倍もあるあの化物を倒せると思いますか?」
「無理だな」
俺、即答。
そりゃあなにかの剣術を極めてたりとかものすごい力持ちとかじゃないと倒せないよな。
「そこで出てきたのが能力だ。正式名称武器能力。ま、いろんな奴がいろんな呼び方で呼んでるけどな。たとえば、スペックとか特性とか。いちばん一般的に呼ばれてるのが、やっぱりそのまんまのスキルだな」
「んで、そのスキルってのは具体的にどんなんなんだ?」
俺の問いに正影はそうだなぁ、と何を言うか考えている。
「……まぁ簡単に区切ると、自分の一部を強くするスキルと、武器になんらかの機能を与えるスキル。技っぽいスキル。あとは……」
正影は最後になにか言おうとしたが、唐突に口を閉じた。俺は、どうした? と問いかけようとしたが、俺も言いかけたまま口を閉じ、周りに意識を集中する。そしてすぐに周りの異常に気がついた。
人がいない。
いままで何かを売りさばいていた商人達。それを買い取ったり覗いたりしていた大勢の客達。それが突如、全員消えていたのだ。
俺は嫌な予感をひしひしと感じつつ、聴覚に集中力を注ぐ。するとどこかで聞いたことがあるようなないような、ズシーン、ズシーンという足音が聞こえてくる。
そして、それは現れた。
今回現れた怪は前回と同じように人型だが、前回の狐顔とは違い、今回はまさしく鬼顔と言っていいだろう。その他で変わった所があるとすれば、爪は前みたいにたいして鋭くなく、人間のような形の手で巨大な棍棒を持っていることぐらいだ。
「お、きたきた。んじゃ紅架。とりあえずあいつ倒せ」
正影は、怪を発見するなり、心の中で冷や汗を撒き散らしている俺に向かって平然と言った。
「ちょとまて! まだスキルについて少ししか知らないぞ!? ここはお手本として正影がさ……」
「知るか。武器は念じれば自動的に『隔離』が解除される。はやく戦え」
反論している俺を無視して、正影は俺に蹴りを入れる。その衝撃で俺は前へと移動させられ、怪の視界に入る。
イコール向こうのイッツ敵対センサーに引っかかったと言うこと。
俺がそこまで認識した瞬間、怪が天上に轟くといわんばかりの咆哮を上げた。やばい本気で殺される。
「待てって! 隔離って何!? まじ助けて!」
「うるさい。早く念じろ」
いつまでも慌ててたら本気でヤバイので、正影の言う通り俺の武器『イフリート・フレイム』を脳内でイメージし、来い、と念じる。
すると、俺の両手両足から、光の粒子が現れ、やがてそれは形を持って具現化した。
両腕の金属製……だと思うナックルに刃。そして、両足に金属製……だと思う靴。まさしく昨日正影に貰った武器『イフリート・フレイム』が俺の四肢に具現化していた。
それと同時に怪がもう一度咆哮し、棍棒を構えながらこっちに向かって走ってきた。
「……武器を手に入れただけで詳しく知らないんだけどな」
俺は呟きながら、イフリート・フレイムを構え、正影をチラリと見る。正影の方は、もしもの時に援護できるように、手元に『ビスマルク』を具現化させている。
俺は、怪に向き直り、こちらに走ってくる化物を凝視する。
そして、タイミングを合わせて俺は走り出し————通り過ぎた。
「……へ?」
俺は呆けた声を出しながら取りあえず後ろを振り返る。そこには、俺を見失ってキョロキョロしている怪と、怪への警戒心は解いていないが、笑いを堪え損ねてニヤニヤしてる正影の姿があった。
あれれ〜? おかしいな〜。俺は、ただ十五メートル先にいる怪に向かって走っただけなのに、どうして走り出してから一秒程度ですれ違ってんだ〜?
俺が呆然としている隙に怪は俺を発見し、再び咆哮を上げながら迫ってくる。
俺も仕方なくもう一度イフリート・フレイムを構えながらタイミングを見計らい、走り出した。
そして通り過ぎた。
「…………」
俺は無言のまま後ろを振り返る。当然そこには俺を見失ってまたキョロキョロしている怪の姿がある。
俺はさらに無言のまま正影を見る。正影は体をくの字に曲げ、笑いを懸命に堪えながら、俺に状況説明。
「え〜とな……さっきも言ったけど武器にはそれぞれのスキルが付随してるんだ……んで……そのイフリート・フレイムのスキルの一つは……『身体能力倍化』。自分の身体能力を2.7倍に跳ね上がらせる……ものすご〜く珍しいスキルだぞ。ありがたく使え」
え〜とつまり? 俺の脚力が通常の2.7倍になった訳だけど、動体視力まで倍化された訳ではないから、自分のスピードを認識できずにあの怪を通りすぎたと。
「なるほど。いきなり実戦で使えるかぁぁぁぁぁぁ!!」
俺、絶叫。