ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.27 )
日時: 2011/11/18 22:47
名前: No315 (ID: vBUPhhME)

声を聞き付けて怪が振り返る。そして俺を見つけるなり、バカみたいに同じ咆哮をまた上げ始めた。今度は相当怒っているそうで、棍棒をぶんぶん振り回している。
 俺は、取りあえずもう一度イフリート・フレイムを構え、今度は全力疾走はせず、ステップのような感覚で、右足に力を込めて走る。倍化された足の筋肉の力と倍化された脚力のおかげで、ほぼ一秒にも満たない時間で、怪との距離を詰めていた。
 一応、俺は動体視力にも少しの自信があったのだが、ステップ程度のスピードで、ギリギリ見えるくらいだ。少々自分に自信がなくなる。
 俺は怪との距離を詰めたと理解した瞬間、左足に力を込め、イフリート・フレイムを切り上げながら飛ぶ。
 今にも怪の巨大な足にぶつかりそうだった俺の体は、唐突に上へと跳ね上がり、俺の右腕に装着されたイフリート・フレイムの刃が、怪の体を切り裂く。
怪も、俺達と同じで、血という液体は出てこず、切り口から大量の光の粒子が血の代わりのように噴き出している。
 俺は空中で、すばやく息と体勢と頭の整理と心の準備を整え、一回転しながら怪の顔面に強烈な踵落としをお見舞いする。
 怪は、俺の二連撃技をまともにくらい、絶叫を上げるが、まだ怯まない。怪は、まだ空中にいる俺に向かって、巨大な棍棒を右斜め上から振り下ろして来た。

「やべっ!」

 俺はとっさに両腕をクロスし、イフリート・フレイムを盾にして振り下ろされた棍棒を受ける。直後に両腕に走る、張り裂けそうな痛み。
結果、俺は、なんとか致命傷は避けたものの、衝撃で地面に叩き落とされる。両腕で受け止めた際に腕が痺れてしまい、ろくな受け身も取れずに背中から地面に衝突する。

「ッ痛!」

 背中を強く打ち付けて、あまりの痛みに叫ぶ事は無かったものの、数秒間、倒れたまま硬直してしまう。それを怪が逃すことなど無く、俺に巨大な棍棒を振り下ろす。

「———ッ!」

 即座に右足を使って棍棒を蹴り飛ばそうと俺は、迫って来る棍棒を凝視する。しかし、棍棒が俺の元に振り下ろされる前に……
——『夢想弾』——
一発の銃声が鳴り響いた。
 怪の棍棒を持っていた右腕の指二本が、どこからか飛来してきた、強力なエネルギーの塊によって引き裂かれ、棍棒を取り落とす。
 正影の攻撃だった。
 俺が正影の方を見ると、正影は平然とビスマルクを構え、ギリギリ聞こえるくらいの声で呟いた。
 ま、一応合格点だな、と。
怪が絶叫を上げるが正影はそれを無視し、ビスマルクを構え、
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『徹甲榴弾』——
複数の銃声が鳴り響く。
放たれた合計四発の銃弾は、初撃の弾のように怪の体を引き裂くことなく、所々に銃弾が突き刺さり、それらは全て、数秒後に爆発した。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『通常弾』——
正影の攻撃はそれでは終わらず、徹甲榴弾とは違う弾種の弾を計八発ほど放ち、爆発で出現した煙を引き裂きながら怪の胴体に叩きこむ。さっきから正影の引き金を引く指の速さが尋常じゃない。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『波動弾』——
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『貫通弾』——
今度現れたのは初撃に出てきたレーザーのようなエネルギーの塊が四発。それに続いて、怪の両肩、両腕、両足を貫通して虚空に消えていった弾が六発。怪は数々の攻撃に対応しきれず、ただ絶叫を上げるのみである。
なんか、怪が可哀想になる光景だ。

「……あれ?」

俺は正影が怪を圧倒しているところで、一つ大きな疑問を浮かべた。
弾の種類が切り変わっているのは分かる。しかし、使用する銃も弾倉も変えていないのに、弾種が変わっているのだ。それに、やけに正影の発射数が多い。まるで銃に収まっている弾倉からではなく、別の場所から弾を装填しているようだ。
正影はそんな俺の疑問と怪の絶叫を現在進行形で完全無視し、黙々と怪に向かって様々な弾種の弾丸を撃ち込み続ける。
そんな正影にそ〜と〜激怒したのだろう。絶叫にも近い咆哮を上げながら怪は左手で棍棒を拾い、横薙ぎに思いっきり振るう。勢いよく振るわれた棍棒は、正影の六発ものレーザー弾を全て弾き、やがて衝撃で棍棒自体もばらばらになって消えた。
怪は自分の武器を失ったことなどこれっぽっちも気にせず、巨体の歩幅を生かして物凄いスピードで正影に向かって走り、左腕を振り上げる。
正影は特に慌てることなく、迫って来る左腕をよく見てタイミングを合わし、跳躍する。
飛ぶと同時に正影のトレンチコートから何か野球ボールの大きさほどの丸い物体が四つほど落ちる。野球ボールと何が違うかと言われれば、全てが真っ黒な色という事と、何か赤い点の光が点滅していることぐらいであろう。
うむ、爆弾に見えなくもない。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『亜音速弾』——
——『精密射撃』——
正影の目がすっと薄くなり、尋常じゃない速さで引き金が引かれる。ビスマルクの銃口から、四発の弾丸が吐き出され、それらは怪の左腕を遥かに上回るスピードである場所へと着弾する。
爆音。轟音。
正影の放った四つの弾丸は、地面に転がった四つの爆弾達に着弾し、爆発を起こす。小さな一つ一つの爆弾は、信じられないほどの威力を発揮し、周りにあるものを塵に変えていく。
それは、正影に狙いを定めていた怪の左腕も例外ではなく、空ぶった左腕は、四つの爆発に巻き込まれ、跡形もなくなくなる。
怪は、左腕をもぎ取られた痛みでもう正影に気を向けることすらも忘れて、本日何度目か分からない絶叫を上げる。
そして、正影はというと、爆風でかなり上空へ飛んでおり、落下しながら怪に銃口を向ける。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『徹甲榴弾』——
——『精密射撃』——
まず放たれた二発はおなじみの徹甲榴弾。その二発は、なんの容赦もなく怪の鬼顔にある額の中心へと食い込む。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『波動弾』——
そして、正影は、神速のスピードで引き金を何度も引く。ビスマルクから吐き出される何発ものエネルギーの塊は、雨のように怪に降り注ぎ、容赦なく巨大な体を切り裂いていく。そして雨が止むと同時に怪の頭がとどめと言わんばかりに徹甲榴弾によって巨大な爆発を起こす。怪が放っていた五月蝿い咆哮は消え去り、頭と左腕を失くした巨大な体は、ゆっくりと地面に倒れ、光の粒子となってどこかへ消え去った。
正影は、スタッと軽やかに着地し、ビスマルクを消滅させながら光の粒子を見つめ一息。

「……え〜と」

こうして、俺にとって二度目の怪との戦いは、またしても正影の助けによって終結した。
 ……とりあえずスキルについてもっと早く教えて欲しかった。