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Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.34 )
日時: 2011/12/22 08:03
名前: No315 (ID: D71pwe7j)

先程の戦いを、一つの影が見ていた。
 つい数分前まで、とある少女が隠れていた屋上に、一人の男がじっくりと三人を見下ろしている。
 見る限りまだターゲットを狙うつもりらしい。それぞれの体勢を立て直し、ターゲットの少女を追いかけだした。
 男は、歩き出した三人を目で追い、三人の姿が見えなくなってもしばらくその方向を見据えながら、銅像のように直立する。
 しばらくその銅像状態が続き、誰かが見ていたら、本当に銅像と勘違いする程、時間が過ぎると、やがて人々—NPCの喧騒が聞こえてきた。
 その喧騒を認識した瞬間、男は三人が消えていった方向へと、一歩一歩早足に進む。
 ……四歩、五歩、六歩、七歩、八——
 男が八歩目を歩いたか歩いていないかの瀬戸際あたりで、急にNPC達の喧騒が一瞬で消え去った。それと同時に男が立ち止まると、すぐにその喧騒が戻ってくる。

「…………」

 男は無言のまま右腕をゆっくりと持ち上げ、その手元に自分の武器を出現させる。
 光の粒子が収束して出来上がったそれは、刃がギザギザで、まるでノコギリのように作られた一振りの剣。男は自分の剣を一瞥しながら剣を降ろし、歩き出す。
 歩きだした先は屋上の隅なのだが、男は何のためらいもなく、まるで飛び降り自殺でもしにいくように、そのまま柵のない隅へと歩きだす。
 ——『隔離』——
 男が歩きながら剣を握った右腕に少し力を加えると、戻ってきたNPCの喧騒が、また消え失せた。男はそんなことを全く気に留めず、屋上の隅まで移動していく。
 ——『筋力増強』——
 そして、男は少し右足の力を込め、なんのためらいもなく、ステップを踏むような感覚のジャンプで屋上の先へと飛び上がった。
 普通なら、ここでたいした距離しか飛べず、かなり下にある地面へと真っ逆さまに落ちていくのだが、男は信じられないほど高く飛び上がり、十メートルぐらい先の建物の屋上へと着地する。
 着地したと同時に男は走り出し、先程と同じ様に建物から建物への大ジャンプを繰り返して、三人を追った。