ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.35 )
日時: 2011/12/22 21:46
名前: No315 (ID: D71pwe7j)

大商業区 商売通り

「だからさぁ……その……スキル? 特性? そういうのをもっと早く教えて欲しかったなぁ」

「うるせぇ。あんなに早く怪が「隔離」を使って来るとは思わなかったんだよ」

「隔離って何?」

「……説明したっけ?」

「いや」

「…………」

「…………」

「……あ、そう」

「こら」

 さてさて〜。舞台は大商業区入り口から数分歩いた先にある商売通り。入り口から近いことや、商売のベテランや新人など、さまざまなタイプの商人が店を出すため、なにかと一番人気の高い商売の場所なのである。
 そんな商人や客のNPCがギャーギャーと騒ぐ中で、棍棒を持った化物との戦いで肉体的にも精神的にも疲労し、周りを見て回る気力すら無くなっている奴がいる。もちろん俺。
 そして俺の隣で、慣れない口笛を吹きながら空を見上げている奴がいる。もちろん正影。
 俺と正影は、あの怪との戦闘の後、休憩も兼ねて、正影が色々な説明を入れながら色々な所を回って行った。
 まず向かったのが裏道。なぜそんな所に行ったかと言うと、とりあえず謎の武器商人Aに会いに行くためだった。俺達プレイヤーに武器を提供してくれる商人。一体どんな奴なのだろうと俺も少し気になりながら行き、会ってみるとなんてことのない、物凄い背丈の小さいヨボヨボの爺さんだった。
 正影が、『ビスマルク』を取り出し、爺さんに何か注文をしている途中。俺はふと気になったことがあって自分のポケットを探り始めた。そして現れた五千七百円。
 絶句だ。いつのまにか知らない内に俺のポケットの中に「うめぇ棒 スーパー★デラックス」が五百七十個買える量の大金(?)が入っていたのだ。そりゃあ絶句しかない。
 どうやら、正影から聞いた「怪を倒すと金が手に入る」というのは本当らしく、おそらく怪を倒した瞬間に、俺のポケットの中へと出現したのだろう。これで「うめぇ棒 スーパー★デラックス」が買える。この世界にあるのかは知らないが。
 「うめぇ棒 スーパー★デラックス」といえば、子供、大人問わず買い求める超安物非常食という事で大人気なお菓子だ。何十年か前、すなわち俺が生まれる結構前にも「うめぇ棒」という名前で大人気の商品だったそうだ。今ではほとんどの「うめぇ棒」が「うめぇ棒 スーパー★デラックス」になっているので、初代うめぇ棒はとても貴重な食べ物らしい。
 一体どんな味なのだろうか? 俺が「うめぇ棒 スーパー★デラックス」で好きな味といえば「甘酸っぱく切ない恋の仮面マスカ舞踏会レード。海のバカヤロー! のコーンポタージュ味」だが、もしかすると初代うめぇ棒はそれにも勝る味を持っているのだろうか?
 ……さて、話がずれたが、俺はとりあえずその金を使い、武器屋で金を保管する財布と、とある物を買って裏道を出て行った。
 そして今に至る。現在の俺達はとりあえず「ここでなんか買ってなんか売って儲けよう」という目的でそこらをうろうろしている。
 物を売るには入り口の門番に商品を確認させないといけないのではないか? と俺は気になったが、ここに二ヶ月は住んでるらしい正影は「商人権」という、周りに被害、迷惑がかからない程度の商品は勝手に売ることができる権限を持っているらしく、俺の心配はするほどでもなかったらしい。

「えーと、スキルについてはどこまで話したっけ?」

 正影が、そこらのアクセサリー店を見物しながら言う。

「それぞれの武器に付随している事と、まぁ色々なタイプに分かれてることだ」

「あぁ、そうそう」

 俺も少々その店の商品を見ながら答える。っていうかその時間帯の過去は怪と戦った事の方がよく記憶に残ったからなぁ、正影の説明もどこか忘れてるかもしれない。

「まぁ、スキルにも色々な種類があるんだが、プレイヤーはそれを応用して使う。単純に使うと、まぁ使えるには使えるが強力な怪相手だとヤバイな。とりあえず全部のスキル説明する訳にもいかないから俺のスキルで説明するぞ」

「へいへ〜い」

 俺は、適当に返事をしながら正影の方を見向きもせず、店の商品をゆっくりと観賞している。まぁ、聞くだけだし別にいいだろ。
 俺が商品を見ていると、正影が隣で「ビスマルク」を出したのが見えた。銃をこんな街中で出して騒ぎにならないのだろうか? もしかしてこの街は銃刀法がないのか? 幸い正影が銃を出してるのはまだ誰も気付いていない。とりあえず俺は正影を無視して商品を再び観賞し、俺がとある品物を指差して「これいくら?」と商人NPCに聞こうと口を開くが、
——『隔離』——

「なぁ、こ……」

 俺が口を開くと同時に、目の前の商人さんが音もなく消えた。それだけでなく、周りのNPCも全て消えてしまっている。イッツ絶妙なタイミング。
 俺は最初はまた怪が出てきたのかと思って周囲を見渡すが、どこにもあの怪物は見当たらないし、でっかい足音も響かない。どうやらNPCが消えた原因は怪ではないようだ。
 俺は、冷めた頭を高速回転させて、ゲーム内で、他にNPCの存在に介入できる存在を速攻で割り当てる。そして、隣にいる正影を冷めた目つきで見る。

「ま、これが全ての武器に付随しているスキル「隔離」って奴だ。発動者を中心に一部のデータを一時的に消去するフィールドを構築するスキルだな。このゲームはNPCも殺せるらしいから怪やプレイヤー同士の戦いにNPCを巻き込まないように作られたんだろ。っても、他にも色々な種類の「隔離」があるわけだが」

 当の本人はビスマルクをクルクルと回しながら淡々と他の隔離についても俺に説明している。いや、確かに聞くより見るほうが分かりやすいけど、せめて、こういう初心者にとって衝撃的なことをいきなりするのはやめてほしいな。いちいち混乱するから。