ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人生ゲームはデスゲーム ( No.8 )
- 日時: 2011/09/25 22:38
- 名前: No315 (ID: vBUPhhME)
「交通事故に遭って、病院で治療を受けることになったんだ。んで、その手術の麻酔のかわりに、なんとかダイブってやつで夢の世界に行くはずだったのに、なぜかここにきた。ここは、本当に夢の世界なのか」
俺がそこまでいうとピエロはうんうん、と頷きながら。俺の疑問に応答。
「ここが、夢の世界じゃないってことは君も分かってるだろ。だって君、俺に質問するとき『ここは本当に擬似世界なのか』って言ってたじゃない?」
なるほど、人の話はちゃんと聞いてるんだな。となると、ここは、あの医者達が作りだした擬似世界か。
それにしても、
「ずいぶんつまらんところだな、俺はここで自由にしてろって言われたが、自由のじの字もない密室じゃないか」
「いやー、ここは君の言う医者達が作った世界じゃないよ。君がその世界に行く前に僕が即席で作った擬似世界に放り込んだんだ」
世界、世界って、なんかスケールが大きいような小さいような。
っていうか即席で作った擬似世界って……何?世界ってそんな簡単に作れるの?
まぁいいか。とりあえず、ここは俺が本来行くべき世界じゃなくて、こいつの作りだした世界であって、こいつがここに連れてきたってことは、どんな理由だろうと俺を誘拐したってことで……
「よし、殺そう」
「あー君。どんな考察でそんな結論に至ったかは知らないけど、放り込んだ理由くらい聞いたら?」
ピエロは俺の言葉を大体予想していたようで、全くうろたえることなく、普通に応答する。
そんなこと誘拐犯に言われても……
まぁ聞くだけ聞いてみるか。
「問①、どうして俺を誘拐した?配点は二点」
「人聞きの悪いことをいうな!しかも点数低!」
なるほど、将来いいツッコミ役になれるな。
「まぁ答えるとね、これから君が行くところは夢の世界なんかじゃあない。彼らが作りだした擬似世界はそんな生易しい所じゃない、とても危険な所なんだ。それで出来るだけの忠告をしておこうかと思って、君をここに連れてきたんだ」
「危険?」
俺は眉を顰める。正直、何を言ってんだと思った。だがここに来る前に聞いたあの医者の寒気のするような声、そしてあの言葉。
『壮大な夢の、いいえ……壮大な人生の旅を』
確かに怪しいと言われれば怪しい。たぶん本当のことをこのピエロは言っているのだろう。
なら、こいつについて行ったほうがいいだろう。
だがこのピエロが信じられるかどうかは、それは別の話だ。
「よし、俺が今から行く所が危険なのは分かった。んで、俺は何をすればいいんだ?」
俺がそう言うと、ピエロは物分りが良くて助かる、とでも言うように、胸をなでおろす。
「とりあえず、もうすぐ向こうに飛び込むことになるからそれから共に行動する。向こうの世界については後々話す、と言うことだ。一人で危険な所に飛び込むよりかはマシだろう?」
確かに、俺にはこれから行く所が危険だとは分かっていても、どれだけ危険かは分からない。さらにどんな危険があるかも分からないから対策を練る時間もない。
そんな状態で一人で飛び込むのは無謀と言っていいだろう。
だが、俺ははっきりと、思いっきり場の空気が凍りつくような言葉を口にする。
「よし、断ろう」
「……」
「……」
「——————え?」
おかしいなぁ、ただ拒否しただけなのにピエロの時間が十秒くらい止まってたぞ?
ピエロは約十秒の硬直から抜け出すと、そりゃあぶんぶん振り回してる腕が千手観音に見えるような慌てっぷりで動揺している。
なんか、少し面白い。
「え?え?なんで?あれ?……キケンダヨ?キケンダヨ?アブナイヨ?」
「いや、わざわざカタコトにしなくても分かるから」
俺はとりあえず落ち着けとピエロをなだめる。ピエロは少しは冷静になったようで腕の残像は相変わらずだが、口調はとりあえず治った。
「えと、なんでかな?今の話を聞いてなかったの?俺が君を助けてやるって言ったんだよ」
「ああ、確かに言った」
「それじゃあ、なんで断るの?一人で行くよりマシだろ?」
「めんどい事は避ける主義なんでな」
俺のその言葉に、ピエロは一瞬、眉をぴくり、と動かした。
俺はそれを見逃すことなくしっかりとその瞬間を瞳に捉えた。
「どういうことだい?」
ピエロは腕の動きを止め、何かを探るように、俺を凝視する。
そんなピエロに対して俺は、平然とした態度で淡々と言う。
「あんたが信じられない」