ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.11 )
日時: 2011/10/23 10:53
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

3.三日月のTシャツ

「ねえねえ望美、一緒にご飯食べにいかない?」

「ごめん、今日用事があって。」

「そっか〜…じゃあ、明日は?」

「うん、大丈夫。じゃあ、明日ね。」

朝乃の誘いを断って、望美は教室から出た。

今日の授業は午前で終わる。望美はつめていた息を静かに吐き出す。

さあ、NEWMOONに会いに行こう。

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T大学駅南口前に、その喫茶店はあった。

藍色の建物。看板には「MOON」と銀文字で書いてある。

扉を押して中に入ると、席はほぼ満席だった。ちょうどお昼時ということもあるのだろう。大学で見かけたことのある人も何人かいる。

「おひとり様ですか?」

ウェイトレスらしき女性が、声をかけてきた。静かな店の雰囲気にあった、黒を基調とした制服を着ている。

「いえ、待ち合わせです。」

「ああ、あの方ですか?」

ウェイトレスが手で示した席には、一人の青年が座っていた。

黒に近い少し長めの茶髪。方耳にだけ付けられた銀色のピアス。銀色の三日月が浮かぶ黒いTシャツに、ブルージーンズ。

「…ええ。」

言ってから、望美は青年に向かって歩き出した。

望美が近づくと、青年はふっと顔をあげた。

自分とよく似た目鼻立ち。10年前の面影が、まだ残っていた。

「朔矢…?」

小さな声で言うと、青年はうれしそうに笑った。

「望美。」

つぶやくように言って、朔矢はほほ笑んだ。

その笑顔の下には、なんの不安も感じられなかった。