ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.13 )
日時: 2011/10/30 09:58
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

5.崩れた幸せ

よく晴れた日曜日だった。

「…。」

篠原麻衣は、仏壇に手を合わせた。

仏壇の写真の中では、男性がほほ笑んでいる。麻衣の夫、篠原連だ。

「もう、10年か…。」

つぶやきながら、麻衣は涙を浮かべた。

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10年前のあの日、連は海外出張で出かけて行った。

麻衣は当時34だった。

連を玄関で見送って、そしていつも通りの生活をしているなか…あの事故は起こった。

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「こちら、飛行機の墜落した現場です。生還者はいないとの情報が…。」

TVでそのニュースを聞いた途端、麻衣は凍りついた。

麻衣の幸せが…崩れた瞬間だった。

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飛行機会社、HACの飛行機が、墜落した。

連は、その飛行機に乗っていた。

原因は点検ミスによる誤作動と操作におけるトラブル。乗客、乗務員全員が亡くなるという大惨事になった。

その後、HACは様々な点検上の問題が発見され、利用者が激減。数年後、倒産した。

また、HACが倒産の危機に陥っている中で、遺族たちがHACの社員の家に押しかけ、暴行を働くなどの事件が多発した。

…麻衣も、その暴行に参加していた。

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「…ふう。」

麻衣が立ち上がった、その時。

ピンポーン…

インターホンが、鳴った。

「…?」

誰だろう。宅急便かしら。

そう思いながら、麻衣は玄関の扉を開けた。