ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.14 )
- 日時: 2011/10/30 10:22
- 名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)
6.新月は赤く染まる
「こんにちは、宅急便です。」
外にいたのは、まだ若い配達員だった。
黒に近い長めの茶髪で、ちょっと「今どき」の若者に見えた。でも、印象はわるくない。むしろ好印象を受ける青年だった。
「ご苦労様です。」
言いながら、麻衣は印鑑を取り出す。
「ここに、お願いします。」
「はい。」
麻衣は印鑑を押した。赤い「篠原」の文字。
「ありがとうございます。」
にっこりと笑う青年。
それにしても、重そうだ…と麻衣は思った。
とても大きな段ボールに入った荷物だった。運ぶの、大変そう…。
「よろしければ、運びましょうか?」
ふいに、青年が言った。
「重いですから。運びますよ。」
「ああ…すいません。お願いできますか。」
「どこまで運べばいいでしょう?」
「じゃあ、二階までお願いします。」
青年は、おじゃまします、と言って、家の中に入った。
(親切な人もいるものね…。)
麻衣はほほ笑みながら、青年の後について二階へ上がった。
「ここでいいですか?」
「はい、どうもありがとうございます。」
麻衣は軽く会釈し、今度は先に階段を降りる。その後ろを、青年がついてくる。
と、その時だった。
背中に、鈍い痛みがはしった。
ぎゃ、と悲鳴をあげ、麻衣は階段から転がり落ち、あおむけに倒れた。
ひどい痛みとともに、何かがシャツに染みていく気がする。鉄のにおいがする。
階段のうえで、青年が笑って立っていた。手には血のついた包丁を握って。
「な…んで…」
青年が階段を降りてきた。あの笑みを浮かべたままで。
「どう…し…て」
なんで、どうして。どうして私が。
青年が自分のわきにかがみこむ。相変わらず、あの笑みをうかべたままで。
「篠原麻衣さん。」
青年が、麻衣をフルネームで呼んだ。
「連さんのところに、行かせてあげる。」
そう青年はいいながら、
包丁を…心臓に向かって…
「ぎゃああああああああっ!!」
悲鳴をあげながら、麻衣はこときれた。
青年の不気味な笑いを見ながら、麻衣は死んだ。