ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.34 )
日時: 2011/12/04 10:48
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

2.消えた笑顔

文化祭に行ってから、一週間後。朝乃は、連日ひどく顔色が悪かった。

西村 健輔が死んだという事実は、世界中のだれよりも、望美が真っ先に知っている。望美が、加害者なのだから…。

でも、望美の親友、朝乃はそれを知るよしもない。

まさか親友が、自分の幼馴染の父親を殺したとは…。

「朝乃、大丈夫…?」

「うん、平気…ごめんね、心配かけちゃって…。」

そういう朝乃は、かなり無理をして笑っているように見えた。その作り笑顔を見ていると、望美の胸がちくりと痛む。

「じゃ、私、今日はもう帰るね…。」

「うん、じゃあ、明日。」

去っていく朝乃を見ながら、望美はふっとため息をついた。

(…朝乃が傷ついている。でも、私は、やめる気はない…。)

「遺族」への復讐心は、今や望美の中でかなり大きなものになっていた。親友への友情よりも、大きなものに…。

…そして、想い人に対する愛情よりも…。

「あ、望美ちゃん…朝乃は?」

「もう帰っちゃった…真夜君、大丈夫?」

「ああ…大丈夫だよ。」

そう言ってやはり悲しそうに笑う真夜をみても、望美の決意は揺らがない。

「じゃ、僕も帰るよ。」

「うん、また明日ね。」

真夜がいなくなると、望美はあの書類を取り出す。

「被害者リスト」。

その、三番目に書かれた名前を、望美はじっと見つめる。


*工藤 紗江

 職業:M大学学生
 住所:AS市 ◎● JKWマンション 207号室
 10年前に死んだ人:工藤 風助(父)


「…3ピース目…埋めてね、朔矢…」

誰にも聞こえないような声で、望美はつぶやく。