ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.38 )
日時: 2011/12/18 10:07
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

4.

工藤 紗江はいらいらしていた。

理由は二つある。一つは、性格の悪い教授が30秒遅れでレポートを受け取ってくれなかったこと。もう一つは、今日遊びに来る予定だった母が予定時間を過ぎても来ないこと。

「まったく、もう。何なのよ坂口は…。」

いらいらしながら教授を呼び捨てにし、紗江はテーブルに着く。

「そして何してるのよママは…。」

もともと、紗江の母親の秋子は時間にルーズな人だった。紗江は父親譲りの生真面目タイプで、母のルーズさにいらいらするのは日常茶飯事だった。

「パパがいたころはママも何とかしっかりしてたんだけどな…。」

10年前にHACの飛行機事故で、紗江の父親の工藤 風助は亡くなっている。

嫌な出来事を思い出し、紗江の心は更にブルーになった。

「はあ…。何なのよHACは…。」

三回目の「なんなのよ」をつぶやくと、紗江はテーブルに突っ伏した。

テーブルには秋子のために用意した料理が並んでいる。もうすっかり冷めてしまっている。まったく、あんなに時間にルーズで、よく会社を辞めさせられないな…。

時計の針が13:00を指す。まったく、12:30には来ると言っていたのに…。

と、紗江の携帯が鳴った。急いで画面を見ると、秋子からだった。

どうやら電車が事故で大幅に遅れたらしい。あと30分ほどで着く、とメールには書いてあった。

「あと30分…!?もっと早くメールしてよ…もう。」

紗江はため息をつくと、返信せずに携帯をテーブルにほうりだした。

と…

 ピーンポーン…

「え?」

インターホンが鳴った。

「ママ…?え、でもあと30分かかるって…。」

紗江は困惑しながら、ドアを開けた。

「はい…?」

目の前には、見知らぬ青年が立っていた。そして、

「え…っきゃ…!!」

刃物が視界に入り、喉に激痛がはしった。